相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺言の記載内容とは異なる内容の遺産分けをすることができるか、ということについて、お話します。
亡くなった方の遺言があるが、その遺言どおりには分けたくない、という場合、それは可能なのでしょうか?
遺産分割が禁止されている場合には不可
相続人の方のご事情等により、相続後すぐの遺産分割に問題が生じることが予想されるような場合、遺言により遺産分割を禁止することがあります。
その禁止期間の間は、遺産分割協議を行っても、そのとおりに遺産分けをすることはできません。
民法(一部抜粋)
(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
遺言執行者が同意しない場合には不可
遺言執行者(遺言による遺産分けの手続きを行う方)が指定されている場合、その遺言執行者の同意がないと、遺産分割協議による遺産分けを行うことはできません。
民法(一部抜粋)
(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
財産の受取人になっている相続人以外の方の同意が得られなければ不可
遺産分割協議により遺産分けをする場合、財産を受け取ることができるのは相続人の方のみとなります。
しかし、遺言の場合、相続人以外の方を財産の受取人に指定することができます(「遺贈」と言います)。
その相続人以外の方(「受遺者」と言います)の同意が得られなければ、遺産分割協議による遺産分けを行うことはできません。
この場合の「同意」とは、具体的には「遺贈の放棄」です。
想う相続税理士秘書
民法(一部抜粋)
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(遺贈の放棄)
第九百八十六条 受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができる。
相続人全員の同意が得られなければ不可
相続人の誰か一人でも反対すれば、遺産分割協議による遺産分けを行うことはできませんが、全員が同意し、さらに、今までお話した点をクリアできれば、遺産分割協議により、遺言の記載内容とは異なる内容の遺産分けをすることが可能となります(ただし、遺言の記載方法によっては、不可とする考え方もあるようです)。
民法(一部抜粋)
(遺産の分割の協議又は審判等)
第九百七条 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
想う相続税理士
民法(一部抜粋)
(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者