相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税制度における住宅取得等資金の贈与の特例について、お話します。
相続時精算課税制度とは?
「相続時精算課税制度」というモノがあります。
原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫に対して贈与をした場合、2,500万円までは贈与税を課税しない、という制度です。
ただし、この贈与による贈与財産には、必ず相続税が課税されます。
相続税の申告の際に、この贈与財産を通常の相続財産に合算して、相続税が計算されます。
想う相続税理士
その場合には、結果的に相続税は課税されません。
相続時精算課税制度を利用した場合に、うっかりミスをしてしまいがちなのは、その贈与の時に贈与税が(2,500万円まで)かからない、というメリットだけに目を奪われ、そこで安心してしまい、相続税の課税対象になる、ということを忘れてしまう、ということです。
その贈与者(財産をくださった方)が亡くなった時には、必ずその贈与財産が相続税の課税対象になるのだということを忘れてしまうと、相続税の申告の際に多額の財産の計上もれを引き起こす可能性があります。
住宅取得等資金の贈与の特例
相続時精算課税制度による贈与は、2,500万円までは贈与税がかからない、とお話しましたが、住宅取得等資金の贈与について、2,500万円を超える非課税枠を設けて特別扱いをしていた時期があり(平成15年から平成21年)、2,500万円+1,000万円=3,500万円の特別控除が可能でした。
また、現在においても、相続時精算課税制度における住宅取得等資金の特別扱いがあります。
租税特別措置法
第70条の3 特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例(一部抜粋加工)
平成15年1月1日から令和5年12月31日までの間(第9項及び第11項において「適用期間」という。)にその年1月1日において60歳未満の者からの贈与により住宅取得等資金の取得をした特定受贈者が、次の各号に掲げる場合に該当するときは、当該特定受贈者については、相続税法第21条の9(「相続時精算課税の選択」)の規定を準用する。
想う相続税理士秘書
そして、今までお話した相続時精算課税制度とは別に、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」という制度があります。
これが主流です。
概要
令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下「非課税の特例」といいます。)。(国税庁ホームページ)
非課税限度額
贈与を受けた者ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。(国税庁ホームページ)
この「1,000万円まで」「500万円まで」の非課税枠は、今までお話した相続時精算課税制度の2,500万円に比べると金額が小さいように思われるかもしれませんが、この非課税は、「贈与税も非課税」ですし、「相続税も非課税」です。
どの特例を使ったのかキチンと確認を!
このように、「住宅取得等資金の贈与の非課税」と言っても、相続税が課税されるモノとされないモノがあります。
相続時精算課税制度による住宅資金の贈与には相続税が課税される、ということをキチンと認識していないと、いつの間にか、主流となる直系尊属の非課税と勘違いしてしまい、相続税の申告書を提出した後、税務署に「財産が2,500万円もれています」とか「3,500万円もれています」というような指摘を受けることがないよう、ご注意を。
想う相続税理士