相続税専門税理士の富山です。
今回は、「名義預金」と「無申告贈与」について、お話します。
相続があると税務署は過去にさかのぼって調査する
相続が発生すると、その相続の情報は市区町村役場から税務署に通知されます。
第58条 市町村長等の通知(一部抜粋)
市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する月の翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。
通知を受けた税務署は、金融機関にデータを提出させて、亡くなった方の過去の預貯金口座の動きをチェックします。
この時、亡くなった方の分だけでなく、相続人や孫の口座もチェックします。
なんちゃって贈与になっていないか?
生前に亡くなった方の口座から相続人の口座にお金が動いている場合、それは贈与なのでしょうか?
贈与だとしたら、贈与税の申告はきちんとされているでしょうか?
お金が動いただけでは贈与になりません。
贈与が成立するためには、「あげますよ」「もらいますよ」という双方の意思表示が必要です。
民法
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
税務署に対して「贈与」だと主張できるでしょうか?
贈与が成立しない場合、例えば、内緒で親が子供の名義でお金を積んでいる、というような場合だと、それは子供の名義を借りて、親がお金を積んでいるのと同じです(これを「名義預金」と言い、亡くなった方の相続財産と考えます)。
つまり、お金を移動したとしても、所有権が移転していない、という取扱いになるのです。
前もってお金の動きについて定義付けをしておく
亡くなった方に「バレないから大丈夫だ」と言われてお金を受け取り、自分の口座に積みました、とお話してくださる相続人の方もいました。
しかし、前述したように、生前のお金の動きは、相続の発生を機に税務署に調べられます。
軽い気持ちで贈与を受けると、相続税よりも高い税率で贈与税が課税される場合もあります。
相続税の申告をする際には、亡くなった方の口座からの出金の行方をきちんと確認しましょう。
それが、相続人や孫のところに移動していないか、移動しているのであれば、それは贈与なのか、贈与ではないのか、移動していないのであれば、そのお金が他の財産に化けたりしていないかを、きちんとチェックしましょう。
知っていたのであれば、それは贈与なのか、なぜ贈与と言えるのか、贈与なのであれば、きちんと申告したのか、という話になります。
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