相続税専門税理士の富山です。
今回は、孫に財産をあげる場合の課税関係について、お話します。
孫は相続人ではない
お孫さんは相続人ではありません。
ですから、例えば祖父の方が亡くなって、遺産分けの話し合いをする場合、そのお孫さんは遺産分けの話し合いに参加することができません。
遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」と言います)に参加できるのは、相続人だけだからです。
この遺産分割協議を経ずに財産を渡すことも可能です。
相続人以外の方にでも相続で財産を渡すことができます。
それは「遺贈」と呼ばれるものです。
「遺言」により自分が亡くなった時に財産をあげるのです。
相続人でないお孫さんにも、遺言を使えば、相続で財産をあげることができます。
相続税が増税になる場合がある
そのお孫さんが相続で財産を取得するということは、その財産が相続税の課税対象になるということになります。
そのお孫さんは、遺産分割協議には参加しなくても、相続税の申告には参加することになります。
「相続税の申告に参加する」とはどういうことかというと、相続税は遺産総額をベースに計算する仕組みになっていて、そのお孫さんが取得した財産だけで相続税を計算することはできず、財産を取得した方全員が情報を持ち寄らないと相続税の計算ができないため、元からの相続人の方と一緒に相続税の計算をしなければならない、ということです。
その上、そのお孫さんの相続税については、「2割増し課税」の対象になります(そのお孫さんが亡くなった方の代わりに相続人(「代襲相続人」と言います)となっている場合を除きます)。
遺言がなくても相続で財産をあげることもできる
お孫さんが死亡保険金の受取人になっている場合、相続の発生に伴い、そのお孫さんが死亡保険金を受け取ります。
その死亡保険金の保険料を亡くなった方が負担していれば、その保険金は相続税の課税対象となり、お孫さんには相続税が課税されます。
この場合、遺産分割協議に参加しなくても、遺言に書かれていなくても、お孫さんはその死亡保険金を受け取ることができます。
相続人の方(相続放棄などをしていない方限定)が保険金を取得した場合には、
500万円×法定相続人の数
の非課税枠を適用することができます。
ですから、場合によっては相続税が無税で済みます。
しかし。お孫さんは相続人ではありませんので、この非課税枠を適用することができません。
非課税枠を適用できない上に、先ほどお話した2割増し課税の適用を受けるということになります。
相続人になることもできる
そのお孫さんと養子縁組をすることにより、お孫さんを将来の相続人にすることができます。
相続人になれば、上記の2割増し課税の適用や、死亡保険金の非課税枠不適応などの目には遭わなくなります。
ただし、相続人になるということは、遺産分割協議に参加する方になるということを意味します。
相続人としての財産の取り分が発生し、理論的には他の元からの相続人の方の財産の取り分が減ることになりますので、その点を十分配慮する必要があるものと思われます。
生前贈与にも注意
相続で財産を取得した場合には、その亡くなった方から死亡前3年以内に贈与により取得した財産に対して、相続税が課税されます。
これは、その方が相続人であろうがなかろうが関係ありません。
上記の遺言や養子縁組や死亡保険金の取得などにより、お孫さんに相続財産を取得させる場合には、そのお孫さんに生前3年以内に贈与した財産については、それが年間110万円以下の非課税枠内に収まった贈与だったとしても、相続税の課税対象財産として申告する必要が出てきます。
相続税の課税対象から除外する方法もある
死亡保険金は、その保険料の負担者が亡くなった方の場合に相続税の課税対象となります。
受取人がお孫さんで、そのお孫さんが保険料を負担していた場合には、その死亡保険金は、お孫さん自身の所得(所得税の課税対象、「一次所得」)となりますので、相続税の課税対象からは除外され、2割増し課税や非課税枠不適用などのデメリットとは関係なくなります。
また、一時所得の場合には、「50万円の特別控除」や「1/2課税」などの軽減策を適用できるメリットがあります。
上記を実行する上で、お孫さんに保険料に充てるためのお金を贈与する場合、そのお金は贈与税の課税対象となりますが、年間110万円の非課税枠に収まっていれば贈与税はかかりませんし、生前3年以内贈与に該当しても、相続で財産を取得しなければ、そのお金は、相続税の課税対象財産とはなりません。
想う相続税理士