相続税専門税理士の富山です。
会社の財政状態が悪いような場合に、役員など会社関係者の方が、自分が所有している不動産を会社に贈与することもあるでしょう。
今回は、個人の方が法人(会社)に対して資産の贈与をした場合の課税関係について、お話します。
法人はタダで財産を取得するのでトクをしている
法人が財産の贈与を受けた場合、本来はお金を払って買うべきなのに、お金を払わずに済むワケですから、その分トクをします(このトクを「受贈益」と言います)。
モノの売り買いは時価取引が原則です。
ですから、その財産の時価相当額のお金を払わずに済んだ、ということになるため、その財産の時価相当の金額に法人税が課税されます。
法人に贈与した個人には譲渡所得が発生する
個人が法人に財産を贈与した場合、時価で譲渡したモノとみなして、所得税が課税されます。
所得税法(一部抜粋)
第59条 贈与等の場合の譲渡所得等の特例
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす。
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
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値下がりしている財産を贈与したのであれば、所得税は課税されません。
例えば、2,000万円で購入した土地があり、その土地の時価が1,500万円に値下がりしている時に法人に贈与したのであれば、ザックリですが譲渡所得は
売値1,500万円△買値2,000万円=△500万円(500万円の赤字)
となるため、所得税はかかりません。
法人がタダで財産を取得してトクをするのは法人だけではない
上記でお話したように、法人がタダで財産を取得すると、そのトクした部分(受贈益)に法人税が課税されます。
しかし、この場合、トクをするのは法人だけではありません。
法人の株主もトクをするのです。
なぜかというと、持っている株式の株価が上昇するからです。
債務超過で株価がゼロの会社が1億円の土地の贈与を受け、純資産が5,000万円になったとします。
この場合、債務超過でゼロだった会社の株価が、プラスに転じるでしょう。
株価がゼロだったのが1,000万円になったとすれば、株主に対して1,000万円の贈与があった、ということになります。
相続税法基本通達(一部抜粋)
9-2 株式又は出資の価額が増加した場合
同族会社の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時によるものとする。
(1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者
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