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最初の相続時精算課税による贈与が年間110万円以下である場合の注意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、年間110万円以下の贈与を受けた場合に、その贈与について、相続時精算課税を選択する場合の注意点について、お話します。


多額の贈与はリスクがあるから注意する

令和5年度税制改正により、相続時精算課税による贈与については、「限度額2,500万円の特別控除額」の他に、「相続時精算課税に係る基礎控除額110万円」が新設されました。

2,610万円の贈与を受け、その贈与に係る贈与者からの贈与について、初めて相続時精算課税を選択する場合、「相続時精算課税に係る基礎控除額110万円」を控除し、次に「特別控除額2,500万円」を控除します。

そうすると、
2,610万円△110万円△2,500万円=0円
となるため、贈与税は課税されません。

このような多額の贈与を受ける場合であれば、相続時精算課税選択届出書の提出を忘れることはないでしょう。

2,610万円の贈与が暦年課税による贈与になったら、
(2,610万円△110万円)×45%△265万円=860万円(特例贈与)
という多額の贈与税がかかってしまうからです。

「申告不要」ということは何もしなくてもいい?

では、110万円の贈与を受け、その贈与に係る贈与者からの贈与について、初めて相続時精算課税を選択する場合はどうでしょうか?

「相続時精算課税に係る基礎控除額110万円」を控除すると、
110万円△110万円=0円
となるため、「限度額2,500万円の特別控除額」を適用するまでもなく、贈与税が課税されません。

そして、このような場合には、贈与税の申告も必要ありません。

ただし、このような場合でも、相続時精算課税選択届出書の提出は必要です。

「こういう場合は『申告不要』だっていうし、贈与税もかからないから何もしなくていいよね?」と考えるのは間違いです。

相続時精算課税選択届出書の提出をしなければ、相続時精算課税を選択しなかったことになるので、暦年課税による贈与になります。

暦年課税贈与は生前贈与加算の対象

「暦年課税による贈与にも110万円の基礎控除額があるから、非課税なのは同じでしょ?」と考えるのは間違いです。

「相続時精算課税に係る基礎控除額110万円」は生前贈与加算の対象になりませんが、「暦年課税に係る基礎控除額110万円」は生前贈与加算の対象になるからです(3年超部分は100万円控除有)。

その贈与を受けた時には贈与税が非課税だったとしても、その贈与者が亡くなり、その贈与者の相続で財産を取得した場合には、その贈与の時期が生前贈与加算対象期間(相続開始前7年以内)に該当すると、せっかく無税だと思って贈与をしても、相続税が課税されることになります。

想う相続税理士

受贈者が、その贈与者の相続で財産を取得しなければ、その贈与の時期が生前贈与加算対象期間に該当しても、相続税は課税されません。