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住宅取得資金等贈与は上棟できていれば上等
想う相続税理士
この特例の要件の一部を抜粋してみます。
参考 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税国税庁(6) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。
(注) 受贈者が「住宅用の家屋」を所有する(共有持分を有する場合も含まれます。)ことにならない場合は、この特例の適用を受けることはできません。
(8) 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。
(注) 贈与を受けた年の翌年12月31日までにその家屋に居住していないときは、この特例の適用を受けることはできませんので、修正申告が必要となります。
さらに、
参考 (住宅用家屋の取得の意義)国税庁住宅取得等資金の贈与について住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用を受けるためには、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅用家屋の新築(新築に準ずる状態として、屋根(その骨組みを含む。)を有し、土地に定着した建造物として認められる時以後の状態を含む。)又は取得をしなければならないこととされている(措法70の2丸1、措規23の5の2丸1)。
措置法第70条の2第1項第1号に規定する住宅用家屋の取得及び同項第2号に規定する既存住宅用家屋の取得の意義は、措置法第70条の3第1項に規定する住宅用家屋の取得及び同項第2号に規定する既存住宅用家屋の取得の意義と同様であることから、70の3-8を準用することとした。
なお、70の3-8において「取得」とは、売主から現実に住宅用家屋の引渡しを受けたことをいうこととし、具体例も示している。すなわち、いわゆる建売住宅や分譲マンションの取得の対価に充てるために住宅取得等資金の贈与を受けた場合において、その建売住宅や分譲マンションの取得のための売買契約を締結しただけでは「取得」には当たらないこととなる。また、住宅取得等資金の贈与を受けた者が、請負契約により住宅用家屋の新築をする場合には、その贈与を受けた年の翌年3月15日現在において、その家屋がいわゆる「棟上げ」を了した以降の状態にあれば「新築」とみるが、建売住宅の取得をする場合には、このような状態にあったとしても「取得」とはみられないこととなる。
とある通り、翌年3月15日までに上棟までしていればOKです。
ただし、建売じゃダメです!
この棟上げ状態で贈与税の申告をする場合には、
参考 贈与税(住宅取得等資金)関係様式国税局(関東信越国税局)想う相続税理士
贈与税の配偶者控除はここに注意
大きな
非課税枠
婚姻期間が20年以上である配偶者からの贈与で、2,000万円の非課税枠がある、というと「聞いたことがあるな」という方が結構いらっしゃるのではないでしょうか?
この非課税贈与の注意点について、詳しくお話していきます。
婚姻期間の
判定
婚姻期間は「20年以上」であることが要件となっています。
これは婚姻の届出のあった日から贈与の日までの期間により計算します。
ですから、入籍されてない期間については、その計算期間に含められません。
また、1年未満の端数があるときには、それは切り捨てられます。
何の贈与が
対象?
非課税贈与の対象となるのは、「居住用不動産」または「居住用不動産を取得するための金銭」です。
居住用不動産について
国内にあるものが対象です。
もっぱら「居住の用に供する土地」若しくは「土地の上に存する権利」または「家屋」で、その贈与を受けた年の翌年3月15日までに、もらった方の居住の用に供していて、かつ、その後も引き続き居住の用に供する見込みであることが要件です。
店舗兼住宅
この特例は、店舗兼住宅についても適用があります。
居住の用に供している部分を特定して(抜き出して)、その部分についてこの特例を適用します。
家屋部分
贈与税の計算上、自分で使っている家屋の評価額は、固定資産税評価額(正確には「固定資産税評価額×1.0」)となります。
この家屋の評価額について、居住用と認められる部分を抜き出して、この特例を適用します。
具体的には、面積按分によりその居住用部分を特定します。
Aもっぱら居住の用に供している部分の面積:60㎡
B居住の用と居住の用以外の用のどちらにも使っている部分の面積:30㎡
Cもっぱら店舗の用に供している部分の面積:40㎡
合計130㎡
まず、Bの部分(どっちつかずのあやふやな部分)の面積をAとCの比率で按分します。
30㎡×60%(=60㎡/(60㎡+40㎡))=18㎡
これが、Bの中から割合計算で居住用部分を抜き出した面積ということになります。
Aは丸々居住用部分ですから、60㎡+18㎡=78㎡が居住用家屋の床面積ということになります。
合計130㎡の家屋のうち、78㎡が居住用部分だということですから、
1,000万円×78㎡/130㎡=600万円
が居住用家屋の評価額ということになります。
土地部分
土地については、路線価方式と倍率方式の2パターンの評価方法があります。
このどちらかの評価方法により計算した、その土地全体の評価額を基に、家屋と同じように、居住用部分を割合計算で求めていきます。
「もっぱら居住の用に供する土地」等の面積が分からない(居宅と店舗が一緒にその土地に乗っかっている)場合がほとんどですので、結果的には下記のような計算になることが多いです。
全体の評価額が2,000万円の上記の例にある床面積130㎡の店舗兼住宅の敷地の場合は?
2,000万円×78㎡/130㎡=1,200万円
家屋の床面積における居住用割合をそのまま使う、ということです。
もっぱら居住の用に供してる部分が明確に分かる場合には、次のように計算します。
Aもっぱら居住の用に供している敷地の面積:20㎡
B居住の用と居住の用以外の用のどちらにも使っている敷地の面積:50㎡
Cもっぱら店舗の用に供している敷地の面積:30㎡(この面積は使いません)
全体100㎡
居住用部分の土地の面積を求めて計算します。
(A)20㎡+(B)50㎡×78㎡/130㎡(ここで家屋の床面積を使用)=50㎡
2,000万円×50㎡/100㎡=1,000万円
特例
この「居住の用に供している部分」については特例的な取扱いがあります。
居住の用に供している部分の面積が、その家屋や土地の面積のそれぞれ概ね90%以上であるときは、「もうほとんど居住用!」ということで、その家屋や土地の全部を居住用不動産として取り扱うことができます。
住宅部分を先行して贈与を受けたことにできるか?
居住用部分が40%、店舗用部分が60%の店舗併用住宅について、40%の居住用部分だけの贈与を受けるということが可能でしょうか?
可能です。
店舗兼住宅の全部を贈与すると非課税枠を超えてしまうため、持分の贈与(一定割合を贈与し共有化)をする場合、居住用部分の40%部分だけの贈与をしよう、ということで4/10の持分の贈与を行うと、原則的な考え方であれば、その持分の中に、居住用部分が40%含まれていることになるので、40%×40%=16%となり、居住用部分40%のうち、16%部分しか贈与を受けることができません。
しかし、「贈与を受けた持分の割合」と「居住用割合」の「いずれか少ない割合」を、「贈与を受けた」「居住用不動産の部分」とすることができる特例があるため、上記の場合には、持分贈与40%部分すべてが居住用部分(40%)と考えることができます。
例えば、居住用部分が40%、店舗用部分が60%の店舗併用住宅について、50%の持分の贈与を受けた場合、「40%」と「50%」で「40%」の方が少ないということになりますので、居住用部分を丸々取得したということになります(残りの10%は店舗部分ということです)。
30%の贈与を受けた場合には、「30%」と「40%」で「30%」の方が少ないということになりますで、この30%部分がすべて居住用部分として認められるということになります(残りの10%部分は贈与されていないということです)。
つまり、先に居住用部分の贈与を受けた、と納税者有利に考えていいということです。
「居住用部分は40%×40%=16%、残りは通常の贈与で丸々課税」なんて間違いをしないようにご注意を。
どちらかだけでも可
この居住用不動産の贈与は、建物と土地のどちらも贈与しなければならない、という訳ではなく、土地のみ又は家屋のみの贈与でもOKです。
同居親族が家屋を所有していて、敷地についてのみ配偶者間で贈与をする、という場合でも、特例の適用を受けることができます。
借地権の場合
その自宅の敷地について、例えば夫が地主さんから借りていて(つまり夫は借地権を有しているということです)、その借地権の上に夫が家屋を建てていた、その家屋を夫が妻に贈与したという場合、妻が夫に対してその借地の使用料を支払うということは通常ありません。
そうすると、「タダで借りている」ので贈与が発生するのかというと、その借地権のタダ利用の権利の価額はゼロとして取り扱われるため、贈与税が課税されることはありませんが、「借地権の使用貸借に関する確認書」を税務署に提出する必要があります。
そもそも論でこの贈与は得なの?
この居住用不動産の贈与は、贈与税が非課税になるので、とにかくやった方がいいかというと、実はデメリットもあります。
相続と比較していきましょう。
不動産取得税・登録免許税
贈与の場合には、不動産取得税や登録免許税がかかりますが、相続の場合には、不動産取得税は非課税であり、登録免許税も贈与に比べて安く済みます。
相続税の特例
相続税の計算においては、自宅敷地について、小規模宅地等の特例という制度があり、配偶者が相続すれば、100坪まで8割引で評価できます。
また、配偶者の税額軽減という制度があり、配偶者が相続した場合には、法定相続分(1/2の場合が多い)と1億6,000万円のいずれか多い金額までが非課税です。
つまり、贈与をしなくても、配偶者は相続でもかなり有利な取扱いを受けることができるのです。
居住用不動産を取得するための金銭について
その金銭の贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その金銭を居住用不動産の取得に充て、その3月15日までにその居住用不動産に住み、その後も引き続き居住の用に供する見込みであるという場合には、その金銭についても特例の対象となります。
贈与された資金で足りない分については自己資金を充てて居住用の不動産を取得した場合ってどうなるの?
妻が夫から1,200万円の贈与を受け、自己資金800万円と合わせて1,500万円の居住用不動産と500万円の家具を購入した場合、この1,200万円が、居住用不動産の購入と家具の購入に均等に充てられた、と考える必要はありません。
1,200万円が、まず居住用不動産の取得1,500万円に充てられたと考えることができます。
ですから、1,200万円は丸々特例の適用対象です。
贈与した
その年に
亡くなって
しまった
場合って
どうなるの?
相続開始の年に、そのお亡くなりになった方から贈与を受けた財産については、贈与税が非課税となり、その代わりに、その贈与財産については相続税が課税されます(相続で財産を取得していることが前提)。
つまり、贈与税の課税対象とならない代わりに、相続税が強制的に課税されるということです。
「贈与税の配偶者控除」の特例は、贈与税の非課税特例であるため、「相続税課税扱いだと、適用できなくなってしまうのではないか?」と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。
この場合には、相続税の申告書に、その贈与を受けた居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の価額のうち2,000万円までの部分について、「あえて」贈与税の課税価格に算入する旨、及びその算入する部分の価額等を記載し、一定の書類を添付してこれを提出することにより、本来であれば贈与税の課税がないことにより贈与税の非課税特例は適用できないのですが、その特例の適用を受けることができるということになっています。
この場合、2,000万円までの部分については、相続税の課税価格に加算する必要はありません。