相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税による賃貸物件の贈与について、お話します。
家賃(地代)収入を相続財産から除外する
お父さんが駅前に小さなビルを所有していて、テナントさんからの家賃収入がある場合、その家賃収入はお父さんのモノです。
そのビルの所有者がお父さんだからです。
その家賃収入はお父さんの預金口座にどんどん貯まります。
そして、その預金残高は相続財産を構成します(貯まれば貯まるほど相続税が増えます)。
このビルを長男に贈与したらどうなるでしょうか?
そのビルの所有者は長男になります。
そうすると、テナントさんからの家賃収入は長男のモノになります。
その家賃収入は長男の預金口座にどんどん貯まるため、お父さんの預金残高は増えません(相続税が増えるのを避けることができます)。
評価額が高い財産の贈与は相続時精算課税で
小さいとはいえ、ビルを贈与するとなると、その評価額は大きいでしょう。
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」があるのですが、暦年課税は財産の金額(評価額)が大きければ大きいほど、適用される税率も高くなります(4,500万円を超えると55%)。
相続時精算課税であれば、最終的に相続の際の相続税の実効税率で課税されるため、低い税負担で財産を移転できる可能性があります。
したがって、(そのビルがメチャクチャ古くて評価額が安い等の事情がない限り)相続時精算課税による贈与を選択した方が良いでしょう。
賃貸物件の敷地はどうする?
上物(建物)だけでも大きな金額になるでしょうから、その敷地(土地)まではなかなか贈与できないでしょう。
と言うのは、相続時精算課税が「最終的に相続税の実効税率で課税される」とはいえ、贈与時には「2,500万円の特別控除額」を超えた部分に対して20%の贈与税を払わなければならないからです。
最終的に相続税の申告で精算されるにせよ、一時的に多額の贈与税を払わなければならない可能性があります。
また、「家賃収入を相続財産から除外」する、という目的であれば、その賃貸物件の敷地(土地)の贈与を受ける必要はありません。
上物(建物)の贈与を受けるだけで、「家賃収入を相続財産から除外」できます。
同族会社に貸している場合に注意
上記の例と似たパターンで、お父さんが上物(建物)とその敷地(土地)を所有していて、その建物を一定の同族会社に貸しているケースについて考えてみます。
この状態でお父さんが亡くなった場合、一定の要件を満たせば、その敷地は「特定同族会社事業用宅地等」として、400㎡まで評価額を8割減額できます。
つまり、400㎡までの部分については、相続税の計算上、2割評価のような感じになるのです。
お父さんがこの上物(建物)を長男に贈与すると、この特例の適用を受けるための要件を満たさないことになり、せっかくの2割評価のチャンスを潰してしまう可能性があります。
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