相続税専門税理士の富山です。
今回は、贈与が遺留分侵害額の請求の対象となった場合の相続税・贈与税の対応について、お話します。
遺留分に算定される基礎財産の金額とは?
遺留分に算定される基礎財産の金額は、ザックリ言うと、次のように計算されます。
+相続人以外の方に対する1年以内の贈与
+相続人の方に対する10年以内の贈与(特別受益)
△債務全額
※当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をした場合には「1年以内」「10年以内」の適用なし
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。
想う相続税理士秘書
遺留分義務者(支払う方)の対応
贈与が遺留分を侵害するモノとして、遺留分侵害額の請求により、その支払う金額が確定した場合には、贈与税は払い過ぎになる
例えば、5,000万円の贈与を受けていた方が、遺留分侵害額の請求により、遺留分侵害額に相当する金額が1,000万円と計算されたとする
その場合、遺留分侵害額を支払うとともに、その確定したことを知った日の翌日から4か月以内に5,000万円△1,000万円=4,000万円で贈与税の計算をやり直すことができる(更正の請求)
贈与税が還付される
遺留分権利者(もらう方)の対応
遺留分侵害額の請求により、遺留分侵害額の支払を受けた方は、遺留分侵害額に相当する金額を相続財産に加算して、相続税の計算をやり直す(期限後申告または修正申告)
相続税を追加で納めることになる
想う相続税理士
また、遺留分義務者が贈与税の申告をやり直したからといって、遺留分権利者も贈与税の申告をしなければならない、というワケではありませんので、ご注意を。