相続税専門税理士の富山です。
今回は、亡くなった方の預貯金からの引き出しの注意点について、お話します。
モメるのを避けたければ親族に説明するためでも領収書を保存する
人(例えば父)がお亡くなりになった場合、その方の財産は、相続人の方々(例えば長男と長女)の共有になります。
遺言がある場合は別として、その共有になった財産をどう分けるか、相続人間で話し合うことになります。
この場合、どう分けるかより、まずは、どんな財産がいくらあるかをきちんと把握するところから始まります。
その際、例えばA銀行の預金の残高が1,000万円だったとします。
それを知った長女が「お父さんはもっとお金があったはず。何でこんなに残高が少ないの?」と言ったとします。
父と同居していた長男が、「医療費『とか』、介護『とか』に『いろいろ』かかったんだよ」と答えても、長女は納得しないかもしれません。
「とか」や「いろいろ」では曖昧だからです。
このような場合、通帳の出金とひもづけて、この100万円の出金のうち、医療費に充てたのがいくら、などと分かるようにしておけば、長女も納得しやすくなるハズです。
その証拠として、領収書やメモも保存しておくのです。
口座からの出金には税務署も目を付ける
これは、この場合の長女に対してだけではなく、税務署に対しても有効です。
生前に多額の出金がある場合、税務署は、その行方に関心を持ちます。
「現金として隠し持っているのではないか」「相続人に贈与されているのではないか」と疑われないよう(疑われても説明できるよう)、そのお金の使い道が分かるようにしておくのは大変有効です。
亡くなった後の口座からの引出しにも注意
口座が凍結される前であれば、亡くなった後でもお金を引き出すことができる場合があります。
多額の出費が予想される葬儀等のためにお金を引き出す場合もあるでしょう。
A銀行の預金の亡くなった日時点の残高が1,000万円なのに、遺産分割協議の時点では700万円しかない、というような場合、やはり、長女の方にどうして残高が減ったのかを質問されることがあるかもしれません。
亡くなった後の場合には、御布施や戒名料など、領収書がもらえないような出費もあるハズです。
そのような場合には、きちんとメモを残しておきましょう。
このような費用は、一定の場合を除き、相続税の申告においても「葬式費用」として「債務控除」の対象となり、相続税を安くする効果があります。
相続税法基本通達(一部抜粋)
13-4 葬式費用
法第13条第1項の規定により葬式費用として控除する金額は、次に掲げる金額の範囲内のものとする。
(1) 葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、埋葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用)
(2) 葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
(3) (1)又は(2)に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
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