相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における葬式費用の債務控除について、お話します。
葬式費用を負担すると相続税が安くなる場合がある
相続税を計算する場合には、一定の要件に該当すれば、亡くなった方が残した借入金などの債務や葬式費用の金額を、遺産総額から差し引くことができます(「債務控除」と言います)。
相続税法(一部抜粋)
第13条 債務控除
相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第1条の3第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。
一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)
二 被相続人に係る葬式費用
債務控除の対象者は包括受遺者か相続人
上記の条文の出だしをご覧いただくとお分かりいただけると思いますが、この債務控除が適用できるのは、「包括受遺者(マイナスの財産も含めて、財産を特定せずに、全部または一定割合の財産を遺言でもらう方)」と「相続人」の方のみです。
ただし、葬式費用については、相続税法基本通達に別の定めがあります。
相続を放棄した相続人の方は葬式費用は債務控除可
相続を放棄すると、最初から相続人ではなかったモノとみなされます。
民法(一部抜粋)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
相続人ではない、ということになると、債務控除はできない、ということになります。
しかし、相続を放棄したことにより相続人ではなくなっても、元は相続人ですから、葬式費用を負担することはあり得ます。
そこで、相続を放棄した相続人の方については、葬式費用だけは債務控除が認められています。
相続税法基本通達(一部抜粋)
13-1 相続を放棄した者等の債務控除
相続を放棄した者及び相続権を失った者については、法第13条の規定の適用はないのであるが、その者が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合においては、当該負担額は、その者の遺贈によって取得した財産の価額から債務控除しても差し支えないものとする。
想う相続税理士