相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告において同族会社株式を純資産価額方式で評価する場合に、その同族会社が借りている土地について、「土地の無償返還に関する届出書」が提出されているときの借地権の取扱いについて、お話します。
出典:TAINS(評価事例708321)(一部抜粋加工)
質疑応答事例8321
土地の無償返還に関する届出書が提出されている場合の貸宅地・借地権の評価
相当地代通達(一部抜粋)
(「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合の貸宅地の評価)
8 借地権が設定されている土地について、無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価する。
なお、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には、43年直資3-22通達の適用があることに留意する。この場合において、同通達中「相当の地代を収受している」とあるのは「「土地の無償返還に関する届出書」の提出されている」と読み替えるものとする。
(注) 使用貸借に係る土地について無償返還届出書が提出されている場合の当該土地に係る貸宅地の価額は、当該土地の自用地としての価額によって評価するのであるから留意する。
土地の無償返還に関する届出書が提出されている場合の貸宅地・借地権の評価については、通達において上記のように定められています。
貸宅地は20%評価減で評価(80%評価)
借地権が設定されている土地について、「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合は、土地所有者と借地人間において、将来、無償で借地権を返還することを約した契約であることから、当該土地に係る借地権の価額は零とし、また、貸宅地の価額は自用地としての価額の80%に相当する金額によって評価することとされている(相当地代通達5、8)。
将来、タダで借地権を返還するとはいえ、「借地借家法の制約、賃貸借契約に基づく利用の制約等を勘案すれば、借地権の取引慣行のない地域においても20%の借地権相当額の控除を認容している(評基通25(1))こととの権衡上」貸宅地の評価上は20%評価減が認められています。
同族会社株式評価上は借地権を20%計上
この場合において、土地の貸付けが、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対するものである場合には、土地の評価額が個人と法人を通じて100%顕現することが課税の公平上適当と考えられることから、被相続人の所有する同社の株式の評価上、自用地としての価額の20%に相当する金額を借地権の価額として純資産価額に算入することとされている(相当地代通達8なお書、43年直資3-22通達)。
借地権は本来ゼロ(零)なのですが、借地人が亡くなった方の所有する同族会社である場合には、その同族会社の株式の純資産価額方式による評価上は、借地権20%を計上する必要があります。
想う相続税理士
相当地代通達8なお書は、「被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合には、43年直資3-22通達の適用がある」と定めているとおり、被相続人が同族関係者となっている同族会社に対し土地を貸し付けている場合に被相続人が所有する同社の株式を評価する際の借地権の価額についての定めであり、土地所有者と株式所有者が同一であることを前提としているものと考えられる。
したがって、本事例のように、土地の所有者が被相続人ではない(=土地所有者と株式所有者が同一でない)場合には、A社の株式の評価(純資産価額方式)上、借地権に相当する金額として、自用地としての価額の20%に相当する金額を純資産価額に算入しないとするのが相当である。