【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

亡くなった方が同族会社にタダで土地を貸していたらどうなる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続財産の中に、同族会社に対して貸している土地がある場合の税務上の取扱いについて、お話します。


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タダで貸したら問題か?

亡くなった方が会社に貸していた土地があって、会社がタダでその土地を借り、その上に建物を建てている場合、問題になるでしょうか?

亡くなった方が会社の社長で、自分の持っている土地をその会社に貸していたが、会社の業績が悪いため、会社は地代を払えない、会社が利益を出すためには経費を削りたい(銀行に決算書を見せなくちゃならないし)、そのような場合に、会社にタダで土地を貸す、というようなことがあるかもしれません。

この「タダで貸す」ことにより、社長の確定申告で何か問題になることがあるかというと、そんなことはありません。

これが逆だと、話は変わります。

会社が社長に土地を貸しているような場合です。

会社は営利を追求するモノ

同族会社の場合、会社と社長は一心同体みたいなところがありますが、法律上は別モノです。

社長が会社の資産(土地)をタダで借りている、ということになると、その分、社長は会社から「トクさせてもらっている」、ということになります。

この場合、税務上は、タダで貸しているとは捉えません。

会社は営利を追求する存在なので、もらうべき地代が発生しているが、それを特別に免除してあげた(まけてあげた)、と考えるのです。

つまり、会社は地代収入を計上する必要があります。

これを「地代の認定課税」と言います。

免除する、というのは「寄附」になりますが、相手が社長の場合、それは税務上「給与」と考えます。

まけてあげた分は、社長に「給料を払っているのと同じ」ということです。

会社が社長にいったん給料を払って、それを支払地代として会社に入れてもらった、と考えるのです。

だから、社長は財布からお金を出して地代を払わなくて済む、ということです。

ですから、そのタダで借りてトクした分は社長の給与収入になり、社長に税金がかかります。

手続き上は、給与は源泉所得税の対象となることから、会社に源泉徴収義務が生じます(会社が税金分を社長から預かって税務署に納めます)。

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その金額が大きいと、会社の経費として認められるのか、という法人税法上の問題が生じる場合もあります。
タダで貸すことにより、「権利金の認定課税」の問題が生じる場合もあります。

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個人は必ずしも営利を追求する存在ではない(追求しなくてもいいことになっている)

最初の話に戻りますが、社長が会社に貸す場合には、地代の認定課税はありません。

個人は必ずしも営利を追求をする存在とされていないため、地代をとらなくても問題にならないのです。

会社側はタダで借りられることになりますが、地代という経費と、免除益(タダで借りられるトク)という収入が同額で相殺されるため、この取引は会社の税金計算に影響を与えません。

でも相続税の特例を受けられないのが大問題!

相続税の計算における2大減税特例の1つである「小規模宅地等の特例」の中に、「特定同族会社事業用宅地等」という適用パターンがあります。

これは、亡くなった方が一定の同族会社に土地を貸している場合、要件を満たせば、その貸している部分の土地について、400㎡まで8割引きで評価できる、というモノです。

その要件の中に、その土地が「同族会社に対して相当の対価を得て継続的に貸し付けられているか」というモノがあります。

つまり、有償での貸し付けが前提であるため、タダ(無償、「使用貸借」と言います)の場合には、適用を受けることができません。

会社がタダで借りていると、相続の時に相続税の増税として跳ね返ってくるのです。

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全くのゼロではなく、会社が土地の固定資産税相当額は払っている、というような場合であっても、税務上は使用貸借に該当します。