相続税専門税理士の富山です。
モノに値段を付ける、モノの価値を金額で決定する、評価する、ということは、結構難しいです。
その最たるモノが土地です。
そのことについて、お話します。
色々な種類の財産があるけれど・・・
相続税の申告における評価の場合、現預金は簡単です。
その残高で評価すればいいんですから。
有価証券はちょっと難しい面があります。
遺産分割の時に、相続の時よりも値段が上がったり下がったりします。
保険の契約も相続税の課税対象になるんですが、これについては、亡くなった日時点における解約返戻金相当額で評価することになります。
つまり、亡くなった時点でお金に変えたらいくらになるのか、という金額で評価するワケです。
一番難しいのはやはり土地です。
土地はいくらで売れるか、お金に変えたらいくらになるか、なんて簡単に分かりません。
相続税申告における「評価額」で土地は売れるの?この記事にも書きましたが、土地には色々な値段が付きます。
その土地の価値を色々な方向から見て値段を付けると、それぞれ値段が変わってしまうのです。
上記の記事の一物四価には入っていませんが、「収益還元法」という方法で評価することもあります。
その土地がいくらの利益を生み出すか、ということから評価額を算出するワケです。
アパートや貸家などは、自分で住むワケではありません。
そこから生まれてくる家賃がその土地の価値みたいなところがあります。
ですから、その収益力をもとにその土地の評価をする、ということです。
相続税を計算する場合には・・・
では、相続財産の中に土地がある場合、どうやって評価するのでしょうか?
色々な評価方法があり、その中から選べるのでしょうか?
そんなことがあったら大変です。
申告する方は混乱してしまいます。
そもそも、例えば収益還元法も10人の人が計算したら10人とも金額が変わってしまうかもしれません(収益還元法の中にも直接還元法やDCF法などがあります)。
申告する人のやり方によって土地の評価が変わり、それによって相続税が全然変わってしまうなんてことがあったら、不公平ですよね。
ですから、相続税の申告においては、土地の評価方法は、基本的なスタンスが決まっています。
「路線価方式」または「倍率方式」により評価します。
路線価や固定資産税評価額などを基に計算するのです。
この路線価方式と倍率方式による土地の評価額は、実際の土地の価値と完全にイコールになるワケではありません。
タワマン節税なんて言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、タワーマンションは実勢価格よりも安く評価されることが多いです。
絶対こんな土地は売れない、というところだって結構な評価額になったりします。
何のための「評価額か」?
しかし、相続税の評価というのは、課税の公平を図る必要があります。
そのためには、評価に一定のルールを定める必要があります。
それにより、ある程度の有利不利は必ず出ます。
そのルール通りに評価することにより、実際の土地の価値よりも高い評価額が計算されてしまうことがあるかもしれませんが、その評価額はあくまでも税金計算上の基礎になる金額であって、その金額で土地を売ることになるワケでも、買うことになるワケでもありません。
その金額をベースに相続税の税率が掛けられて、相続税が計算される、そして、実際に支払う(懐が痛む)ことになるのは、その相続税の金額の分だけです。
相続税申告における土地の評価額は、実際の土地の価値とイコールではない、とお話しましたが、とはいえ、適当な金額が付くようになっているワケではなく、理論的には土地の時価を計算しようとしていることはしているのです。
財産評価基本通達
1 評価の原則(一部抜粋)
(2) 時価の意義
財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。
想う相続税理士