意思能力がないのに相続税対策?
相続税を少なくするための相続税対策、遺産争い(争続)を避けるための相続対策として、生命保険やアパート、遺言が登場します。
でも、「生命保険に加入できさえすればOK」「アパートの契約ができさえすればOK」「遺言が完成しさえすればOK」という訳ではありません。
それが、そのご本人の「意思」なのかが重要です。
もし、生命保険に加入した時、アパートの契約をした時、遺言を作成した時に、その方に意思能力がなかったとしたら、それらはすべて「無効」です。
また、不動産の売却や購入などによる、資産の組み換えについても同様です。
ご本人に意思能力がないとしたら、その行為は誰の「意思」か?
それにより得をする「相続人」の意思ですよね。
相続税対策・相続対策で得をするのは、その財産を所有するご本人ではありません。
ご本人は相続税を納めることはありません。
その相続人が相続税で苦しまないため、遺産分けで苦しまないために、対策を実行するのです。
もちろん、「自分が亡くなった後に家族が苦しまないために」と考えて、ご本人がこれらの対策をする場合もありますが、相続人候補の家族の(強い)要望が背景にあるケースもあるでしょう。
人は疑い深いですから、そうみられると思っておいた方が無難です。
ご本人に意思能力があれば問題ない
とはいっても、そのご本人にちゃんと意思能力があれば、どんな対策だってやっちゃっていいのです。
自分の財産なんですから、どうしようと自分の勝手です。
対立相続人や税務署に対抗できるか?
ご本人がピンピンしていれば何の心配もないのですが、例えば認知症の症状があるような場合だと、これらの対策は大変危険です。
その対策を実行した時に、意思能力があったかどうかでモメるからです。
対立相続人は、遺言が無効であるという訴えを起こします。
税務署は税務調査で、不当に相続税が安くなっていると指摘し、修正申告を迫ります。
「対策を実行する能力があったか」「不自然じゃないか」がポイント
これらの方々が登場した場合、そのご本人の、その対策を実行した当時の、医療機関での診察の内容や、介護状態、生活状況や身の回りで起こっていた出来事、それらによる精神状態などにより、その対策を実行できるだけの意思能力がご本人にあったのか、そのような対策をご本人が望まれる状態にあったのか、などが検証されます。
対策を実行できればOKという訳ではないのです。
だからこそ早めの対策が重要
認知症になったりしてからでは遅いのです。
もうちょっと年を取ってから、と考えるのは、リスクの増大を招きます。
思い立ったら実行しましょう。