相続税専門税理士の富山です。
今回は、非上場株式(一般的な同族会社の株式)の相続について、お話します。
相続税を払いたくても払えない?
相続税の申告において厄介なのは、評価額が高いのに換金性が乏しい財産の相続です。
例えば、預金を1億円相続しても、その中から相続税を払えば済むのである意味ラクです。
土地はどうでしょうか?
土地は個別性が強いですから一概には言えませんが、売っても大丈夫な土地であれば、売却してその代金を納税資金に充てることができるでしょうし、立地等により買い手がつかないような土地の場合には、そもそも評価額が高くない場合が多いですから、相続税の負担もそれほど高くなく、問題にならないと思われます(例外は当然ありますが)。
また、自宅の土地や仕事に使っている土地などは、売ってしまうと住めなくなる、仕事ができなくなるので、相続税が高いと大変です。
これらの居住用又は事業用の土地については、「小規模宅地等の特例」の適用要件に該当すれば、最大で8割引で評価することができますから、税負担をかなり下げることができます。
同族会社の株式にも特例がある!
土地に比べると、同族会社の株式はかなり厄介です。
業績が良かったり過去の利益の蓄積があるような会社は、株式の評価額が高くなり、相続税も跳ね上がります。
資本金1,000万円の同族会社の株式は、相続税の評価額も1,000万円というワケではありません。
条件を整備してM&Aをすることにより、株式を売却して現金化することも可能ですが、相手のある話です(土地以上に)。
また、その場合には会社の経営権を手放すことになりますから、売却代金は入ってきますが、その会社で今までと同じように仕事をすることは難しくなります。
そこで、同族会社の株式については、「非上場株式等についての相続税の納税猶予」という制度があり、一定の要件を満たす場合には、相続税の申告において、納税を猶予してくれる(免除はしてもらえないけど、待ってもらえる)のです。
この制度を適用することができれば、相続税の負担をかなり下げて、株式を相続することができます。
納税猶予の適用を受けるための絶対条件
この納税猶予の適用を受けるためには、その株式が遺産分割済であることが条件となります。
遺産分けでモメていたりして取得者が決まっていないと、この納税猶予の適用を受けることはできないのです。
株式の評価額が高い会社の場合には、この適用が受けられるかどうかにより、相続税が大きく変わります。
このような場合には、その後継者に対して「遺言」で同族会社の株式を相続させ、納税猶予の適用の要件を満たせるようにしておく必要があります(生前贈与による株式の移転も有)。
株式の評価額が高い場合には、評価額ベースでの全体の財産に占めるその株式の割合が高くなり、他の相続人の方々が相対的に財産を多く相続できない状況が生じます。
その場合には、それらの相続人の方は、その会社の株式を相続した相続人(後継者)に対して、「自分たちには財産をもっと相続する権利がある」と「遺留分侵害額の請求」をする可能性があります。
そうすると、遺言で株式を後継者に渡したとしても、無意味になってしまうのでしょうか?
そんなことはありません。
遺留分侵害額の請求は、取得財産の少ない相続人に対して「お金を渡す」ことにより解決できる制度です。
遺言で取得した株式を渡す必要はありません。
会社に資金があるのであれば、会社からお金を借りて、それを渡すことも可能です。
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