相続税専門税理士の富山です。
今回は、家族間における資金移動の注意点について、お話します。
名義が変われば自分の財産ではなくなる?
相続税を安くしようと考えるとき、多くの人は相続財産を減らそうとします。
確かに相続財産が減れば相続税は安くなりますが、減らしたつもりでも減っていない場合があります。
例えば、お子さんやお孫さんの名義で預金をすれば、その預金の金額の分だけ、ご自分の預金の残高が減ります。
ご本人としては、お子さんやお孫さんに贈与した、という認識だと思います。
それが贈与として成立すれば、相続税は安くなるかもしれません(3年以内加算に引っかかると相続税の課税対象ですが)。
しかし、名義が変わっただけでは贈与にはなりません。
贈与が成立していなければ、お子さんやお孫さんの名義を借りて自分のお金を預けている(「名義預金」)という取扱いになります。
配偶者の方にお金を渡すのは無税?
夫婦は通常、お財布が一緒ですから、例えば、旦那さんが稼いだお金を奥様の口座に入れる、そして奥様の口座から生活費としてお金を支出する、というケースは多いはずです。
生活費については、贈与税はかかりません。
相続税法
第21条の3 贈与税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
しかし、この生活費の非課税贈与は、必要な都度お金を渡す、ということが前提になっています。
奥様に生活費としてお金を渡す、と言いつつ、奥様の口座に多額のお金が蓄積されている場合には、それは生活費ではありません。
この場合も、口座の名義は奥様になっていますが、旦那さんの財産(「名義預金」)として取扱われる可能性が高いです。
贈与税の申告をしているか?
もし、「名義預金ではない」ということであれば、所有権が移転しているということですから、贈与でお金が動いている、ということになりますので、その場合、110万円を超える贈与については、贈与税の申告をしていないとおかしい(しているべき)、ということになります。
親族間でお金を動かして(ましてや夫婦間であれば同じ財布なのに)税金を払わなければならない、というのは、なかなか気持ち的に受け入れ難いところがあるかもしれません(「身内の中でお金を動かしただけなのに!」という感じで)。
しかし、贈与というのは「タダで財産を移転する行為」です。
よほど気前のいい人でなければ、他人に対してあまりそういうことはしません。
親族だからやるのです。
親族間の贈与だから贈与税は払わなくていい、なんてことはなく、逆に親族間だからこそ贈与をするのであり、贈与税が課税されることになるのです。
想う相続税理士