【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

財産を譲るために相続放棄をすると裏目に出ることがある

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続放棄について、お話します。

「今回の相続では、私は財産は要らない。私がもらえる分を他の相続人にあげたいから、私は相続放棄をする」と考える方がいらっしゃるかもしれません。

でも、その考え通りに行かない場合があります。

逆に、その「あげたい」と思った相続人の方が大変になる場合があるのです。


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同じ立場の相続人の方が相続放棄しない場合

夫が亡くなり、相続人が妻・長男・次男(計3人)だとします。

法定相続分は、妻1/2・長男1/4・次男1/4です。

長男が相続放棄をすると、その長男の相続分は次男に移行します。

妻1/2・次男1/2です。

長男が「自分は生前、父に良くしてもらったから、相続では何も要らない。自分が相続できる分は弟に相続させたい」と考えれば、それが可能となります。

妻1/2・次男1/2とお話しましたが、もちろん妻と次男の間の遺産分割協議においてお互いが納得すれば、妻1/2・次男1/2以外の遺産分けをすることも可能です。

想う相続税理士秘書

配偶者の方が相続放棄をした場合

上記の例で妻が相続放棄をした場合、その妻の相続分は長男・次男に移行します。

長男1/2・次男1/2です。

妻が「自分には老後まで生活するだけのお金があるし、自分が相続すると、自分の相続の時の相続税が増えてしまうから、自分が相続できる分は子供たちに相続させたい」と考えれば、それが可能となります。

同じ立場の相続人の方が全員相続放棄をした場合

上記の例で、長男・次男がお母さん思いのいいお子さんだったとします。

長男・次男が相続放棄をすると、その長男・次男の相続分は妻に移行、しません。

民法(一部抜粋)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

長男・次男が相続放棄をすると、誰が相続人かを考える上では、長男・次男はいないモノと考えます。

お子さんがいらっしゃらないご夫婦の場合、誰が相続人になるかというと、「配偶者」「亡くなった方のご両親(正確には直系尊属)」です。

上記の例で言えば、「妻」「夫の父母」が相続人となります。

「相続人になる人」には順番があります。

下記の第1順位(子など)の方がいなければ、第2順位(父母など)の方になるのです。

  1. 第1順位:子や孫など(直系卑属)
  2. 第2順位:父母や祖父母など(直系尊属)
  3. 第3順位:兄弟姉妹

もし、夫の直系尊属(父母や祖父母など)の方が既に亡くなっている場合には、さらに上記の第3順位(亡くなった方の兄弟姉妹)の方になるのです。

長男・次男が、「自分達にはお金がたくさんあるから、お父さんの財産は全部、お母さんに相続してもらいたい。その方が、お母さんも安心するだろう」と考えて相続放棄をすると、上記の場合、お母さんは旦那さんのご兄弟と遺産分割協議をしなければならなくなってしまうのです。

想う相続税理士

上記の最後のケースのようになるのを避けるためには、相続放棄をせず、相続人として遺産分割協議に参加し、自分が財産を相続しない、という内容の遺産分割協議書に署名押印すればいいのです。