【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

間違って特定居住用宅地等とした特定事業用宅地等は更正の請求が可能?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、特定居住用宅地等として相続税の申告をした倉庫の敷地について、特定事業用宅地等として更正の請求をすることができるか、が争われた判決について、お話します。

出典:TAINS(Z888-2694)(一部抜粋加工)
令和6年1月25日判決


相続税専門税理士に任せてスッキリ!
相続税専門税理士が直接対応
事前予約で土日祝日夜間対応可能
明確な料金体系+スピード対応
大手生命保険会社様で相続税・贈与税に関するセミナー講師の実績有(最近の実績:令和5年11月・令和5年12月・令和6年2月)

または はこちらから


特定事業用宅地等にもっと含められる部分があった

宅地のうち倉庫の敷地の用に供されている部分(本件倉庫敷地部分)についても特定事業用宅地等に含まれるのにその旨の申告をせず、特定居住用宅地等として申告したという誤りがあったとして、更正の請求をしたところ、更正をすべき理由がないとする更正処分を受けたため、同更正処分の判断に不服があるとして、その一部の取消しを求める事案である。

原告が本件申告書に添付した「小規模宅地等についての課税価格の計算明細」に記載した内容は、要旨、以下のとおりである。
(ア) 特定事業用宅地等
b 取得者の持分に応ずる面積 75.00㎡
(イ) 特定居住用宅地等
b 取得者の持分に応ずる面積 988.62㎡

特定事業用宅地等については、まだ限度面積(400㎡)に達していないのが分かります。

小規模宅地等の特例の適用を変更して更正の請求を受けることはできない

措置法69条の4第6項が、本件特例の適用を受けようとする者のいわゆる当初申告書又はその修正申告書に同条1項の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り同項を適用する旨を定めていることに加え、同項及び同条3項において、特定事業用宅地等と特定居住用宅地等とは別の区分に該当するものとして規定され、措置法施行令40条の2第5項1号においても、措置法69条の4第1項の「規定の適用を受けるものとして選択しようとする当該特例対象宅地等又はその一部について同項各号に掲げる小規模宅地等の区分その他の明細を記載した書類」を申告書に添付することが求められていることに照らすと、本件特例は、納税者が、当初申告又はその修正申告において、本件特例を受けるものとして当該特例対象宅地等又はその一部について小規模宅地等の区分その他の明細を記載した書類をもって選択した範囲で適用されるというべきであり、後になってこれを覆し、本件特例の適用を拡大する趣旨で更正の請求をすることを許さないこととしたものと解される

とはいえ、小規模宅地等の特例については、A土地について小規模宅地等の特例のBパターンを適用して相続税の申告をしたが、A土地にはBパターンは適用できない、ということが判明した、そこで、C土地について小規模宅地等の特例のDパターンを適用して申告をやり直す、ということが認められる場合があります。

しかし、今回はこれが認められません。

なぜでしょうか?

更正の請求は「当該計算に誤りがあった」場合に認められる

本件明細書等においては、本件倉庫敷地部分が特定事業用宅地等として区分されていたと認めることはできないところ、本件特例に係る規定の内容及び趣旨に鑑みれば、小規模宅地等の区分に係る納税者の申告は本件特例の適用の可否に係る重要な要素と位置付けられていると解するのが相当であり、そうすると、小規模宅地等の区分の事実誤認は、国税通則法23条1項に基づき更正をすべき旨の請求をすることができる事由である「当該計算に誤りがあった」場合には該当しないものというべきである。

「当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき(国税通則法 第23条 更正の請求)」には更正の請求が可能なのですが、倉庫の敷地は特定事業用宅地等なのに、特定居住用宅地等としたのは、計算に誤りがあったのではなく、「事実誤認」だから認められない、とされました。

想う相続税理士

本当は倉庫の敷地の部分も特定事業用宅地等に含めることができたものの、それを含めずに小規模宅地等の特例を適用して相続税の申告をしたとはいえ、その申告において適用を受けた部分については間違っていない、倉庫の敷地の部分を間違って特定居住用宅地等として計算しても、限度面積要件の関係で除かれてしまうので、計算結果自体は間違っていない、つまり、「当該計算に誤りがあった」場合には該当しない、ということになります。