【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

譲渡損失が発生している場合や譲渡所得が少ない場合の取得費加算の特例の適用可否

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例の注意点について、お話します。

出典:TAINS(資産課税課情報R050600-007)(一部抜粋加工)
資産課税課情報 第7号 「資産税質疑事例集」 令和5年6月作成


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相続財産を譲渡すると相続税が経費になる?

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間内(相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで)に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。

土地建物等を譲渡し、譲渡所得(儲け)が発生した場合には、所得税の確定申告をする必要があります。

その土地建物等が相続で取得したものであり、その相続の際に相続税を納付している場合には、所得税の確定申告の際に、その納付した相続税の一部(その譲渡した資産に対応する相続税)を経費にすることができる場合があります。

譲渡損失が生じた資産に係る相続税は取得費加算不可

相続した建物と土地を譲渡しました。

相続の際に納付した相続税のうち、譲渡した建物に対応する相続税は900万円、譲渡した土地に対応する相続税は4,200万円です。

建物の譲渡については譲渡損失(譲渡価額△取得費△譲渡費用がマイナス)4,000万円が生じていて、土地の譲渡については譲渡所得(譲渡価額△取得費△譲渡費用がプラス)3億2,300万円が生じています。

本件特例を適用することができるのは本件土地に係るもののみであり、本件特例の適用額は、4,200万円となる。

建物の譲渡については譲渡損失が生じているため、譲渡した建物に対応する相続税900万円は、経費にすることができません(譲渡所得の計算上、土地の譲渡所得に適用することはできません)。

他の譲渡資産に係る相続税については取得費加算不可

相続した建物と土地を譲渡しました。

相続の際に納付した相続税のうち、譲渡した建物に対応する相続税は3,000万円、譲渡した土地に対応する相続税は4,500万円です。

建物の譲渡については譲渡所得(譲渡価額△取得費△譲渡費用)2,000万円が生じていて、土地の譲渡については譲渡所得(譲渡価額△取得費△譲渡費用)1億8,000万円が生じています。

本件特例の適用額は、6,500万円となる。

取得費加算の特例の適用額は、対応する相続税が、取得費加算の特例適用前の譲渡所得(「譲渡所得に係る収入金額から本件特例の適用がないものとして計算した取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額を控除した残額」)を超える場合には、その取得費加算の特定適用前の譲渡所得(「同残額」)となります。

建物の取得費加算の特定適用前の譲渡所得は2,000万円ですので、対応する相続税が3,000万円あっても、2,000万円しか取得費加算の特例は適用できません(譲渡所得の計算上、残りの1,000万円を土地の譲渡所得に適用することはできません)。

想う相続税理士

取得費加算の特例の適用額は、譲渡した資産ごとに計算する必要がありますので、ご注意を。