【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

役員報酬と同族会社株式の評価額の関係

相続税専門税理士の富山です。

今回は、役員報酬が相続税対策(同族会社株式の評価額引き下げ)に与える影響について、お話します。


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役員報酬を支払えば株価は下がる

会社が役員に役員報酬を支払うことで、会社の現預金は減り、また、役員報酬が経費になることにより、会社の利益(所得)が減ります。

同族会社の株式は、原則として「純資産価額」「類似業種比準価額」をミックスして評価額を計算します。

会社の現預金が減れば、会社の資産が減りますので、「純資産価額」は低くなります。

「類似業種比準価額」は、会社の「①配当」「②利益」「③純資産」をベースに計算します。

会社の現預金が減ることにより、「③純資産」が減少し、また、役員報酬が経費になることで会社の利益が減れば「②利益」が減少しますので、「類似業種比準価額」は低くなります。

つまり、役員報酬の支払いにより、同族会社株式の評価額は下がります。

役員報酬が経費にならない場合があるので注意

上記でお話した「類似業種比準価額」「②利益」は、会社の「所得=法人税法上の利益」をベースに計算します。

この所得計算において、役員報酬が経費(「損金」)として認められないと、「②利益」は減少しません。

つまり、せっかく役員報酬を支払っても、同族会社株式の評価額の引き下げ効果を十分に生まなくなってしまうのです。

役員報酬の金額を変動させることにより、会社の所得金額を簡単に操作できないよう、法人税法においては、経費になる(「損金算入」できる)要件がきちんと決まっています。

相続税の節税を考える上でも、法人税の知識は必要となります。

役員報酬が経費にならないということは、同族会社株式の評価額引き下げ効果を生まないばかりか、法人税の引き下げ効果も生まないワケですから、ある意味、二重に損してしまいます。

せっかく会社のお金を出すのであれば、節税につながるように出しましょう。

役員報酬は役員退職金の金額にも影響する

役員が退職する場合、役員退職金を支払う場合があります。

退職金は、もらう側にとっても課税上のメリットがいろいろあります(退職所得控除・1/2課税・分離課税)。

想う相続税理士秘書

役員退職金も、経費になる・ならないの話が出てきます。

役員退職金の金額を「功績倍率法」により計算する場合、役員報酬の金額がベースとなるのです。

法人税法基本通達(一部抜粋)
9-2-27の3 業績連動給与に該当しない退職給与
いわゆる功績倍率法に基づいて支給する退職給与は、法第34条第5項《役員給与の損金不算入》に規定する業績連動給与に該当しないのであるから、同条第1項の規定の適用はないことに留意する。
(注) 本文の功績倍率法とは、役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法をいう。

役員報酬の支払いと同じように、役員退職金の支払いによっても、同族会社株式の評価額は下がるのですが(純資産を減らし、利益を減らすため)、その役員退職金の金額のうちに、経費として認められない部分(「不相当に高額な部分」)が出てくると、上記の役員報酬と同様、「同族会社株式の評価額の引き下げ効果を十分に生まなくなってしまう」結果となってしまいます。

その原因となる「不相当に高額な部分」には、役員報酬も影響するのです。

想う相続税理士

利益が減ることにより、「比準要素数1の会社の株式」に該当したりしてしまうと、逆に評価額が上がってしまう場合もあります。

同族会社株式の生前贈与による相続対策・相続税対策を進める際には、ご注意を。