相続税専門税理士の富山です。
今回も、前回に引き続き、非上場会社の株式の相続・相続税対策について、お話します。
想う相続税理士秘書
役員退職金の支給による手取り増によるメリット
前回の(上記の)記事を読んで、「支給するのは役員退職金じゃなくて役員報酬でもいいのでは?」とお思いになった方がいるかもしれない
確かに株価引き下げ効果はあるが、役員報酬として支払うより役員退職金として支払った方が手取りが増える
退職金は、課税が優遇されている(税負担が軽い)
大きな退職所得控除額や1/2課税が適用できるのである
手取りが増えるということは、それだけ先代社長の手元に現金が増えるということ
それを相続・相続税対策に活用する
相続人が後継者1人という場合(争族が起き得ないパターン)でも、非上場株式とセットで現金を相続することで、その現金を相続税の納税資金に充当できる
相続人が後継者1人ではない場合(争族が予想されるパターン)の場合には、後継者以外の方に現金を相続してもらい、後継者が非上場株式を相続することに納得してもらう
役員退職金の金額に関する課題
とにかく役員退職金を払えば非上場株式の相続の問題が解決するのかというと、そんなことはない
会社に現金がないとダメ
役員退職金を支給することにより株価が下がる、それにより低い税負担で株式を移転できる、と分かっていても、その役員退職金の原資(通常は現金)がなければ支給できない
つまり、会社の中に現金を作っておかなければならない
不要資産の売却や金融機関からの借入等により、まとまった現金を用意する必要がある
金額をいくらにするか?
役員退職金は会社の経費になるが、いくら支給してもその全額が経費になるワケではない
不相当に高額と認められた場合には、その不相当に高額な部分の金額は経費にならない
経費になった方が法人税も安くなるし、非上場株式を評価する際の類似業種比準価額の「評価会社の1株当たりの利益金額」を引き下げる効果が発生する
不相当に高額でなければ全額経費になるのだが、その金額は、通常、功績倍率法による次の算式により計算する
法人税基本通達9-2-27の3(一部抜粋)
功績倍率法とは、役員の退職の直前に支給した給与の額を基礎として、役員の法人の業務に従事した期間及び役員の職責に応じた倍率を乗ずる方法により支給する金額が算定される方法
法人税の呪縛に囚われずミッション達成を考える
ただし、これは「税法の決め」であって、自由な経済活動を制限するモノではない
税法上「不相当に高額」になっても、経費にしなければ問題ない
経費にならなくても、現金という会社の資産が減ることにより、株価を下げる効果はある
役員退職金(により発生する現金という個人の財産)をどのように使うのか(活用するのか)をきちんと考える
「後継者以外の相続人が、自分の財産の取り分が少ないと言って納得せず、争族になった」となるよりは、「節税できなかった(経費にならない部分があった)けど、現金を準備できたので争族を回避できた」となった方が失うモノが少ないものと思われる
想う相続税理士
せっかくの役員退職金の支給による株価引き下げ効果を弱める(相殺してしまう)ことがないようにしつつ、この場合には法人税についてのシミュレーションもする必要があります。