相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺産分けとは別に、相続税申告のために話し合いをしなければならない場合がある、ということについて、お話します。
相続税は財産を取得した分だけ納税する
相続税は、全体の財産に対する相続税を計算し、それを財産の取得割合に応じて按分して納税します。
例えば、全体の財産に対する相続税が1,000万円で、財産の取得割合が、長男Aが40%、長女Bが60%、という場合、長男A・長女Bがそれぞれ納める相続税は、
長女Bの相続税:1,000万円×60%=600万円
このような計算構造になっていることから、「誰が何を取得するのか」が決まっていないと取得割合を計算できないため、遺産分けの話し合いがまとまらないと、相続税が計算できない、ということになります。
想う相続税理士
逆に、「誰が何を取得するのか」が決まっていれば、相続税の申告・納税はできそうですが、そうはいかない場合があります。
他の相続人等の同意がないと適用できない特例がある
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
この特例には、複数の適用パターンがあり、また、適用できる面積に限度があります。
長男Aが相続する土地にも適用できるし、長女Bが相続する土地にも適用できる、でも、どちらも適用するのは面積的に無理、という場合が出てくるのです。
このような場合、どちらかが相手に小規模宅地等の特例を譲る、ということになります。
または、全体で200㎡受けられるから、長男Aが相続する土地・長女Bが相続する土地それぞれに100㎡ずつ適用する(仲良く半分ずつ適用する)ということも考えられます。
しかし、基本的には、単価の高い土地に適用した方が有利なので、例えば、長男Aが相続する土地の方が単価が高い場合、その土地に200㎡適用した方が、全体の相続税も安くなり、一家全体で考えれば一番おトク、ということもあるのですが、それで最もトクするのは長男Aなワケですから、長女Bが納得しないかもしれません。
長女Bが納得しないと(同意しないと)、長男Aが相続する土地に(長女Bが相続する土地にも)小規模宅地等の特例を適用することはできません。
さて、どうすればいいのでしょうか?
納税に差が出るのであればお金で解決する
このような場合、「代償分割金」を活用するのも手です。
長男Aから長女Bに、遺産分けの枠組みの中でお金(代償分割金)を渡すのです。
「贈与」ではありませんから、長女Bは贈与税を納める必要はありません。
その代償分割金の分だけ、相続財産を取得したことになりますので、その分の相続税を納めることになります。
でも、余計にお金(財産)がもらえるワケですから、長女Bにとってはトクですよね。
(代償分割金の金額にもよるでしょうが)長男Aに小規模宅地等の特例の適用を譲ってもいい、と考えるでしょう。
長男Aは、相続税が安くなった分、長女Bに代償分割金を渡すのですから、損はないですよね。
また、代償分割金を渡した分、相続税が減ることになりますので、長男Aはその分、相続税も安くなります。
想う相続税理士秘書
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