相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告に関して、相続人の方のご体調が、国税通則法・第66条・無申告加算税の「例外規定」に該当するかどうかが争われた事例について、お話します。
申告期限に間に合わなければ無申告加算税が課税される
相続税法(一部抜粋加工)
第27条 相続税の申告書
相続又は遺贈により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
上記にあるとおり、相続税の申告書は、10ヶ月以内に提出しなければなりません。
もし、間に合わなければ、無申告加算税が課税されます。
国税通則法(一部抜粋加工)
第66条 無申告加算税
次の各号のいずれかに該当する場合には、当該納税者に対し、当該各号に規定する申告、更正又は決定に基づき第35条第2項の規定により納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。
一 期限後申告書の提出又は第25条の規定による決定があつた場合
二 期限後申告書の提出又は第25条の規定による決定があつた後に修正申告書の提出又は更正があつた場合
正当な理由があれば申告期限に間に合わなくてもOK?
上記の国税通則法の条文には、次の続きがあります。
ただし、期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
「病気のために相続税の申告書を申告期限までに提出できるような精神的・肉体的状況ではなかった」ということが、上記の「正当な理由」に該当するかどうかが争われた事例があります。
申告する方の責めに帰することのできない客観的な事情があるか?
出典:TAINS(F0-3-829)(一部抜粋加工)
令04-05-11裁決
4 請求人は、本件申告期間(亡母の相続開始から法定申告期限までの間)において、精神的・肉体的に過酷な状況にあり、相続税の申告については全く考えることができなかったことから「正当な理由」がある旨主張する。
5 確かに、請求人は本件申告期間において精神疾患を理由に入院又は通院しており、病状に関する担当医師らの各所見などからすると、本件申告期間における請求人の日常の生活能力は相応に低下していたことが認められる。しかしながら、他方で、担当医師らの各所見があることに加え、請求人は外部の者との接触や外出を担当医師らから禁止されておらず、複数回外出している上、弁護士と面会して◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯を行わないことを判断し、その旨意思表示をすることができている。また、本件申告期間全てを通して請求人が本件申告書を提出できる状態になかったことを客観的に裏付ける証拠も見当たらない。
6 これらのことからすれば、本件申告期間における請求人の病状は、客観的にみて、本件申告書を法定申告期限までに提出できない状態であったとか、あるいは、税理士等他の者に申告を依頼するなどの意思表示すらできない状態であったとまではいえない。
7 そうすると、請求人の主張する事情は、真に請求人の責めに帰することのできない客観的な事情ということはできず、請求人に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に該当するということはできないから、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。
「日常の生活能力は相応に低下していた」と認めつつも、「複数回外出している」「意思表示をすることができている」ことから、「申告期限までに提出」できるし、「税理士等他の者に申告を依頼」できたハズ、としています。
例外的に無申告加算税が課されない「正当な理由」がある認められるのは、なかなか難しいようです。
想う相続税理士