未成年者に対する贈与で未成年者が受贈の意思表示ができる場合
民法(一部抜粋)
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
贈与は、あげる人(贈与者)ともらう人(受贈者)の「あげます」「もらいます」という双方の意思表示があれば成立する。
贈与は契約(典型契約)である。
そして、契約は法律行為である。
民法(一部抜粋加工)
(未成年者の法律行為)
第五条 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
未成年者が法律行為をする場合には、原則として、法定代理人である親権者の同意を得る必要がある。
ただし、贈与を受けることは、上記の「単に権利を得る」ことに該当するため、親権者の同意を得なくても成立する。
未成年者に対する贈与で未成年者が受贈の意思表示ができない場合(できる場合も)
民法(一部抜粋)
(財産の管理及び代表)
第八百二十四条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
未成年者に対する贈与で、受贈者が受贈の意思表示をすることができない場合、例えば、生まれたばかりの赤ちゃんであっても、親権者である両親が代わりに受贈の意思表示(受諾)をすることができる。
つまり、贈与が成立する。
これは、受贈の意思表示ができる場合であっても同様である。
「税務署から見た贈与」という観点を持つ
税務署は、贈与の成立や実態の有無に着目する。
もらったということは、そのもらった人が自由に財産を使えなければおかしい。
贈与があったハズなのに、その財産を贈与者が管理し続けている、というような場合には、贈与が成立していない、とみなされる可能性がある。
未成年者が成年になった場合、上記の民法第八百二十四条の「親権を行う者は、子の財産を管理し」も関係なくなる。
つまり、その財産の管理が成年になった子供に移行する必要がある。
また、税務署は「親族間ではどうにでも口裏を合わせられる」と考えているので、贈与があったと税務署に説明しても、なかなか信用してもらえない可能性がある。
そこで、贈与時に贈与契約書を作成しておくことも重要となる(公証役場の確定日付等も検討する)。
贈与を成立させるために贈与契約書を作成するのではない。
贈与があったことを疎明(明らかであると思ってもらう)ために作成するのである。
また、金融機関で教育資金の非課税贈与の手続きを行う際に、親権者の署名欄がある贈与契約書を作成するが、これは、第三者である金融機関に迷惑がかからないように作成するのである(贈与契約書が無くても、贈与は成立する)。