配偶者居住権の存続期間とその短縮に伴う贈与税・所得税課税
民法(一部抜粋)
(配偶者居住権の存続期間)
第千三十条 配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。
配偶者居住権の存続期間は「一生の間」か「別段の定めによる期間」のいずれかである
存続期間についての別段の定めがある場合、その延長・更新はできないモノと思われる(そのような規定はない)
延長・更新はできなくても、存続期間の一部を放棄することにより、「一生の間」または「別段の定めによる期間」を短縮することはできる
この場合には、原則として、その自宅建物やその敷地の所有者に贈与税が課税される
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
9-13の2 配偶者居住権が合意等により消滅した場合
配偶者居住権が、被相続人から配偶者居住権を取得した配偶者と当該配偶者居住権の目的となっている建物の所有者との間の合意若しくは当該配偶者による配偶者居住権の放棄により消滅した場合又は民法第1032条第4項《建物所有者による消滅の意思表示》の規定により消滅した場合において、当該建物の所有者又は当該建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)の所有者(以下9-13の2において「建物等所有者」という。)が、対価を支払わなかったとき、又は著しく低い価額の対価を支払ったときは、原則として、当該建物等所有者が、その消滅直前に、当該配偶者が有していた当該配偶者居住権の価額に相当する利益又は当該土地を当該配偶者居住権に基づき使用する権利の価額に相当する利益に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を、当該配偶者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。
(注) 民法第1036条《使用貸借及び賃貸借の規定の準用》において準用する同法第597条第1項及び第3項《期間満了及び借主の死亡による使用貸借の終了》並びに第616条の2《賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了》の規定により配偶者居住権が消滅した場合には、上記の取り扱いはないことに留意する。
「自宅不動産=居住権(配偶者)+所有権(他の相続人)」という構造になっているため、「居住権(配偶者)」部分が放棄によりゼロになれば、それは「所有権(他の相続人)」の方に押し寄せてくる
不動産の価値の一部が移転する
それがタダなら贈与に該当し、贈与税の課税対象となる
タダではなく金銭のやり取りがあった場合には、配偶者居住権の売買(譲渡)に該当し、所得税の課税対象となる
この場合、総合課税に該当する
資産課税課情報 第24号 令和2年12月1日 国税庁資産課税課
「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)(一部抜粋加工)
配偶者居住権の消滅につき対価の支払を受けた場合には、その対価は、譲渡所得として所得税の課税対象となるべきものとされた。そして、配偶者居住権は賃借権類似の法定債権の性質を有する点を踏まえれば、現行の賃借権の課税関係と同様に、総合課税の譲渡所得として課税すべきものと考えられる。
条文上は、「『分離課税』には該当しない、だから『総合課税』」という規定ぶりになっている
租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
(分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産の範囲)
31・32共-1 措置法第31条第1項又は第32条第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)の規定により分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産は、次に掲げる資産に限られるから、鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)、温泉を利用する権利、配偶者居住権(当該配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)を当該配偶者居住権に基づき使用する権利を含む。)、借家権、土石(砂)などはこれに含まれないことに留意する。
⑴ 土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物(以下「土地建物等」という。)
⑵ 事業又はその用に供する資産の譲渡に類するものとして措置法令第21条第4項第2号に掲げる株式等(措置法第32条第2項に規定する株式等をいう。)のうち措置法令第21条第3項各号に掲げるもの