相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続や贈与に関する訴訟の提起等があった場合の申告対応について、お話します。
「もらった」のに「贈与していない」と訴訟を起こされたら?
出典:TAINS(Z269-13291)(一部抜粋加工)
令和元年7月3日判決
贈与の有効性が裁判で係争中であるから贈与税の期限内申告書を提出しなかったことは、国税通則法の「正当な理由」には該当しないとして無申告加算税の賦課決定処分の取消しが認められなかった事例納税者(原告)は、父から株式の贈与を受けたとして贈与税の期限後申告をしたところ、課税庁が無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、その取消しを求めたのが本件です。贈与の効力が裁判で争われていたという事情が、期限内申告ができなかった「正当な理由」(国税通則法66条1項ただし書)に該当するかが争点です。
贈与の効力が争われている場合でもひとまず申告し、無効の判決が出ても更正の請求は可能であること、また納税者は贈与が有効に成立していると認識していること、これらを考えると、期限内申告ができなかったことについて客観的な事情があったとはいえないとして、納税者の主張を退けました。
「裁判で贈与がなかったことになるかもしれないから贈与の申告はしない」という判断は間違い、ということです。
申告しなかったことに対して、無申告加算税というペナルティの税金を払うことになりました。
他の相続人から遺留分侵害額の請求を受けたら?
全財産を遺言により相続しても、他の相続人から遺留分侵害額の請求をされた場合、遺留分は民法に定められた最低限の取り分なので、通常は、その侵害額に相当する金銭を支払うことになります。
ただし、それは調停や審判等により話が決着した時の話です。
話が決着するまでは、遺留分侵害額の請求が無かったモノとして相続税の申告をします(全財産相続)。
決着したらやり直します(更正の請求・修正申告・期限後申告)。
相続税法基本通達(一部抜粋加工)
11の2-4 裁判確定前の相続分
相続税の申告書を提出する時又は課税価格及び相続税額を更正し、若しくは決定する時において、まだ法第32条第1項第2号、同項第3号、法施行令第8条第2項第1号又は第2号に掲げる事由が未確定の場合には、当該事由がないものとした場合における各相続人の相続分を基礎として課税価格を計算することに取り扱うものとする。
こちらの記事もご覧ください。
遺留分侵害額の請求中の相続税の申告方法想う相続税理士