【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

債権放棄ではなく増資なら他の株主に贈与税がかからない?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、増資をした場合に他の株主に贈与税が課税されるパターンについて、お話します。

出典:TAINS(相続事例707723)(一部抜粋加工)
東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官(令和6年7月作成)
「資産税質疑事例集」


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会社に対する貸付金をチャラにしてあげるとどうなる?

相続税対策で債権放棄をすると他の株主に贈与が発生する? 類似業種比準方式による非上場会社の債務免除時の贈与(株式価値上昇部分)の計算方法

上記の記事でお話したとおり、会社に対して貸付金としてお金を入れていたけれども、会社が返済できそうにないので、その貸付金をチャラにしてあげた(債権放棄した)という場合には、他の株主に贈与が発生する場合があります。

貸付ではなく出資(増資)なら贈与税はかからない?

では、会社にお金を入れる場合に、貸付金としてお金を入れる「貸付」ではなく、下記のように資本金を増加させる「増資」を選べば、他の株主に贈与は発生しないのでしょうか?

A株式会社(以下「A社」という。)は、資本金10,000,000円、発行済株式総数10,000株の同族会社であり、A社の発行済株式(以下「A社株式」という。)は、代表者甲が4,000株、甲の長男乙が6,000株を所有している。
A社は、長期間にわたって赤字経営となっており、A社株式の1株当たりの時価は、400円となっている。
A社は、資本金を10,000,000円増資することを予定しており、増資に係る新株の引受けは、甲1人が行う予定である。また、増資方法は全額金銭出資とし、その新株1株当たりの払込金額は1,000円とする予定である。なお、当該増資後のA社株式の1株当たりの時価は700円となる予定である。

他の株主が所有する株式の価値が上がれば贈与が発生する

乙が甲から対価を支払わないで利益を受けたとみなされる金額1,800,000円〔(@700円-@400円)×6,000株〕は、贈与税の課税対象となる。

増資(出資)でも、他の株主が経済的利益を受けたのであれば、贈与が発生し、贈与税が課税される可能性があります。

相続税法基本通達(一部抜粋)
9-2 株式又は出資の価額が増加した場合
同族会社(法人税法(昭和40年法律第34号)第2条第10号に規定する同族会社をいう。以下同じ。)の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。
(1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合 当該財産を提供した者
(2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合 当該現物出資をした者
(3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合 当該債務の免除、引受け又は弁済をした者
(4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合 当該財産の譲渡をした者

「株式の価値が上がったら贈与」というポイントについては、相続税法基本通達において上記のように定められているのですが、ここに書かれていなくても贈与に該当する、とされています。

想う相続税理士

時価より高い金額で増資をする場合には、ご注意を。