相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続人から廃除された方がいる場合の、相続及び相続税申告における注意点について、お話します。
「遺産に係る基礎控除額」は「相続税の非課税枠」
相続税法(一部抜粋加工)
第15条 遺産に係る基礎控除
相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(生前贈与加算適用後)の合計額から、3,000万円と600万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。
相続税の計算においては、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
で計算される「遺産に係る基礎控除額」を財産の金額から控除するため、控除した後にゼロ、または、マイナスになれば、相続税はかからない、ということになり、つまり、その金額は「相続税の非課税枠」だ、ということができます。
相続放棄をした方の人数も「法定相続人の数」に含まれる
民法(一部抜粋)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
相続放棄をすると、法定相続人ではなくなります。
しかし、上記の「法定相続人の数」の計算上は、その数に含めます。
相続税法(一部抜粋加工)
第15条 遺産に係る基礎控除
2 前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第5編第2章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。
相続人の廃除があった場合の法定相続人の数
亡くなった方に対して虐待等をしていた方は、相続人としての資格を失う場合があります(「廃除」といいます)。
民法(一部抜粋加工)
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
廃除があった場合には、その排除された方の人数は、上記の「法定相続人の数」に含めません。
出典:TAINS(相続事例大阪局R050000)(一部抜粋加工)
誤りやすい事例(相続税関係 令和5年版) 大阪国税局資産課税課
(相続人から排除された者がいる場合の基礎控除の金額)
【誤った取扱い】
49 相続税の基礎控除の計算における相続人の数は、相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとして判定されているので、相続人から排除された者がいる場合も、相続税の基礎控除の計算における相続人の数に含めて計算した。
【正しい取扱い】
49 排除があった場合には、その排除がなかったものとして判定することとなっていないから、相続人の数には含めない(相法15②)。
想う相続税理士秘書
なお、排除された者に子がいる場合には、代襲相続人となることから、その子は相続人の数に含める。
想う相続税理士