【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

「相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の災害特例」のピンポイント解説②

相続税専門税理士の富山です。

今回は、「相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の災害特例」の適用を受けるための手続き等について、お話します。

想う相続税理士

下記の記事の続きです。
「相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の災害特例」のピンポイント解説①

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特例の適用を受けるためには税務署長の承認が必要

この災害特例の適用を受けるためには、財産をもらった人が、災害発生日から3年を経過する日までに、「災害により被害を受けた場合の相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例に関する承認申請書」を税務署に提出し、その承認を受けなければならない

この承認申請書には、被害を受けた部分の価額を明らかにする書類等を添付する必要がある

その申請が承認された場合、税務署において審査した「被災価額」が通知される、その「被災価額」は、その贈与財産を将来の相続税申告に織り込む際、贈与時の価額から控除する金額であるため、相続発生時までその通知に関する書類をきちんと保管しておく必要がある

贈与税は被災前ベースで納税する必要がある

R6.7に相続時精算課税により評価額5,000万円のA建物の贈与を受け、R6.8にそのA建物が被災して全壊した場合、翌年のR7の贈与税の申告の際には、
(5,000万円△110万円△2,500万円)×20%=478万円
の贈与税を納めなければならない(贈与税の申告・納税は通常どおり)

5,000万円から被災価額が控除されるのは、相続税の申告の時の話であり、贈与税の申告の時の話ではない

過去に相続時精算課税による贈与により取得した財産も特例の対象

この災害特例は、R6以降に被災した場合に限られるが、その贈与があったのは、R6以降でなくても良い(R5以前に相続時精算課税により贈与された財産も対象)

災害特例の適用対象は「土地」と「建物」限定

この災害特例の適用対象財産は土地と建物に限定されている

借地権は土地ではないので対象とならない

建物と独立している構築物は対象とならない

相続時精算課税により贈与を受けた建物は対象となり得るが、相続時精算課税により贈与を受けたお金で取得した建物は対象とならない

贈与した年に贈与者が死亡した場合でも対象(届出を忘れるな!)

  1. BさんがCさんにA建物をR6に「相続時精算課税」により贈与し、BさんがR6年中に亡くなった場合、この贈与についてのCさんの贈与税の申告は不要
  2. BさんがCさんにA建物をR6に「暦年課税」により贈与し、BさんがR6年中に亡くなった場合、CさんがBさんの相続で財産を取得する場合には、この贈与についてのCさんの贈与税の申告は不要
申告不要になるのは、①②のどちらも、その贈与財産が相続税の課税対象になるから
ちなみに②のパターンで、CさんがBさんの相続で財産を取得「しない」場合には、その贈与財産は贈与税の課税対象となるため、基礎控除額以下の贈与だったりしない限りは、贈与税の申告は必要です。

想う相続税理士秘書

A建物が被災した場合に、「①も②も贈与税の申告は不要、だったら、相続時精算課税でも暦年課税でも同じなんだから、わざわざ相続時精算課税を選択しなくてもいい」と考えるのは大間違い

①だったらこの災害特例が適用できるが、②は使えない

①だったら被災価額を控除した金額が相続税の課税対象となるが、②は被災しても贈与時の価額が相続税の課税対象

だから、②(暦年課税)のつもりで贈与を受けても、被災した場合には①(相続時精算課税)を選択した方がいい

①(相続時精算課税)を選択する場合には、(贈与税の申告は不要だが)「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要なので、災害特例の適用を受ける場合には、贈与税の申告をしなくてよくても、届出書の提出は忘れないこと

想う相続税理士

もっと突っ込んで言うと、「②のパターンで、CさんがBさんの相続で財産を取得『しない』」前提だったとしても、A建物が被災した場合に、CさんがBさんの相続人だったりして、Cさんの相続で財産を取得することができるのであれば、Cさんの相続で財産を取得し、かつ、その贈与について相続時精算課税を選択すれば、A建物に対する課税は、災害特例を適用した相続税で済みます(そうしないと、被災前の金額に対する贈与税課税となってしまいます)。