相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続時精算課税による贈与により取得した土地または建物について、災害により被害を受けた場合の特例について、お話します。
相続時精算課税を選択した場合のリスク
贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2パターンがあります。
相続時精算課税による贈与を受けた場合、その贈与財産の価額(令和6年以後の贈与については、その価額から原則として110万円の基礎控除を差し引いた金額)が相続税の課税価格に加算されます。
つまり、その贈与財産に相続税がかかります。
相続税の課税価格に加算されるのは、その贈与財産の「贈与時」の価額です。
その贈与財産の「贈与時」から「相続時」までの間に、その財産が値上がりしていようが、値下がりしていようが、贈与時の価額で相続税の課税価格に加算します。
ですから、贈与時に1,000万円だった財産が相続時に5,000万円に値上がりしていても、1,000万円の価額に対して相続税を納めればOKです。
逆に、贈与時に5,000万円だった財産が相続時に1,000万円に値下がりしていても、5,000万円の価額に対して相続税を納めなければなりません。
仮に相続税の実効税率が30%だとすると、5,000万円×30%=1,500万円ですから、その贈与財産については1,500万円の相続税を納めなければなりません。
その贈与財産を売却して納税資金を工面しようとしても、1,000万円の価値しかないので、1,500万円の納税資金が準備できない、なんてことになります。
相続時精算課税にはこのようなリスクがあります。
相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例
ただし、災害により値下がりした場合には特例があります。
相続時精算課税による贈与により取得した土地又は建物について、令和6年1月1日以後に災害によって相当の被害を受けたことなど一定の要件を満たす場合において、税務署長の承認を受けたときは、その土地又は建物の価額から、災害により被害を受けた部分に対応するものとして計算した金額(被災価額)を控除することができます。
災害により被害を受けた場合の特例適用の具体例
(例えば父から子に)収益物件を相続時精算課税により贈与すると、相続税の節税になる場合があります。
その物件に係る収益(家賃収入等)が、今までは父の預金口座にどんどん貯まっていましたが、贈与後は子の預金口座に貯まるようになります(贈与後は子が大家さんになるからです)。
つまり、家賃収入等が預金口座にどんどん貯まることによる父の相続財産の増加を抑える効果が見込めるのです(固定資産税等の経費は子が負担することになります)。
例えば、「5,000万円」の賃貸マンションを令和5年に相続時精算課税により贈与したとします。
その賃貸マンションが時の経過により4,500万円に値下がりしていた時に被災したとします。
被災価額は「3,000万円」だとします。
この場合、相続税の課税価格に加算される分譲マンションの価額は、
5,000万円△3,000万円=2,000万円
となります。
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