相続税専門税理士の富山です。
今回は、施設が災害により損害を受けたため、事業継続要件を満たせない場合の、小規模宅地等の特例の適用可否について、お話します。
申告期限まで事業を継続することが要件
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
特例の適用パターンはいくつかあるのですが、特定事業用宅地等の場合、引き継いだ亡くなった方が営んでいた事業、または、亡くなった方と生計を一にしていた親族の事業については、
が課せられます。
しかし、もし、その宅地等の上の施設が災害により損害を受けたため、やむを得ず、申告期限において事業を休止していた場合、「事業継続要件」を満たさないことになってしまうのでしょうか?
再開のための準備が進められていればOK
租税特別措置法関係通達(一部抜粋)
69の4-17 災害のため事業が休止された場合
措置法第69条の4第3項第1号イ又はロの要件の判定において、被相続人等の事業の用に供されていた施設が災害により損害を受けたため、同号イ又はロの申告期限において当該事業が休業中である場合には、同号に規定する親族(同号イの場合にあっては、その親族の相続人を含む。)により当該事業の再開のための準備が進められていると認められるときに限り、当該施設の敷地は、当該申告期限においても当該親族の当該事業の用に供されているものとして取り扱う。
申告期限において事業が継続されていなくても、その継続されていない理由が、災害(施設の被災)により事業を休止したためである場合には、その事業の再開のための準備が進められていることを条件として、事業継続要件を満たすモノとして取扱ってよい、ということになっています。
災害特例があるのは特定事業用宅地等だけではない
租税特別措置法関係通達(一部抜粋)
69の4-17 災害のため事業が休止された場合
(注) 措置法第69条の4第3項第2号イ及びハ、同項第3号並びに同項第4号イ及びロの要件の判定については、上記に準じて取り扱う。
上記の
- 「第2号イ及びハ」は
「特定居住用宅地等」の「相続開始時から申告期限まで引き続き当該建物に居住していること(一部抜粋)」「相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の居住の用に供していること(一部抜粋)」 - 「第3号」は
「特定同族会社事業用宅地等」の「申告期限まで引き続き当該法人の事業の用に供されているもの(一部抜粋)」 - 「第4号イ及びロ」は
「貸付事業用宅地等」の「申告期限まで引き続き当該貸付事業の用に供していること(一部抜粋)」「相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の貸付事業の用に供していること(一部抜粋)」
を指していますので、特定事業用宅地等以外の適用パターンでも、施設が災害により損害を受けたため、申告期限において居住や事業が継続できない場合でも、「(居住や事業の)再開のための準備が進められていると認められるときに限り」、居住継続要件・事業継続要件を満たすモノとして取扱ってよい、ということになるモノと思われます。
想う相続税理士