相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続で小規模宅地等の特例の適用対象地を取得した親族の方が、申告期限までにお亡くなりになった場合の特例の適用について、お話します。
小規模宅地等の特例にはいろいろな要件がある
相続税の計算には、2大減税特例と言われるモノがあります。
「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の特例」です。
後者の小規模宅地等の特例は、一定の居住用または事業用の宅地等について、最大で8割引きで評価できる、という制度です。
適用パターンとしては、「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」などがあり、要件もそれぞれ異なります。
特定居住用宅地等の場合、「申告期限まで」の「所有継続要件」「居住継続要件」が課せられます。
特定事業用宅地等の場合、「申告期限まで」の「所有継続要件」「事業継続要件」が課せられます。
特定同族会社事業用宅地等の場合、「申告期限まで」の「所有継続要件」が課せられます。
貸付事業用宅地等の場合、「申告期限まで」の「所有継続要件」「事業継続要件」が課せられます。
申告期限までにお亡くなりになった場合には?
では、申告期限前に、その宅地等を取得した親族の方がお亡くなりになった場合、小規模宅地等の特例の適用はどうなるのでしょうか?
租税特別措置法(一部抜粋)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
申告期限(当該親族が申告期限前に死亡した場合には、その死亡の日。第4号イを除き、以下この項において同じ。)まで
宅地等を取得した親族の方が申告期限前にお亡くなりになった場合には、基本的には「申告期限まで」を「お亡くなりになった日まで」で判断していい、ということです。
また、上記の租税特別措置法の中の「第4号イ」は、貸付事業用宅地等のうち、亡くなった方が不動産貸付業などの事業を行っていた土地について規定している部分です。
また、上記にはありませんが、「第1号イ」は、特定事業用宅地等のうち、亡くなった方が事業を行っていた土地について規定している部分です。
この2つのケースについては、租税特別措置法関係通達に次のように規定されています。
租税特別措置法関係通達
69の4-15 宅地等を取得した親族が申告期限までに死亡した場合
被相続人の事業用宅地等を相続又は遺贈により取得した被相続人の親族が当該相続に係る相続税の申告期限までに死亡した場合には、当該親族から相続又は遺贈により当該宅地等を取得した当該親族の相続人が、措置法第69条の4第3項第1号イ又は第4号イの要件を満たせば、当該宅地等は同項第1号に規定する特定事業用宅地等又は同項第4号に規定する貸付事業用宅地等に当たるのであるから留意する。
(注) 当該相続人について措置法第69条の4第3項第1号イ又は第4号イの要件に該当するかどうかを判定する場合において、同項第1号又は第4号の申告期限は、相続税法第27条第2項《相続税の申告書》の規定による申告期限をいい、また、被相続人の事業(措置令第40条の2第1項に規定する事業を含む。以下69の4-15において同じ。)を引き継ぐとは、当該相続人が被相続人の事業を直接引き継ぐ場合も含まれるのであるから留意する。
その親族の相続人が代わりに「申告期限まで」の要件を満たせばよい、ということです。
また、その「申告期限」は、「その宅地等を取得した親族の方がお亡くなりになってから」10ヶ月以内です。
相続税法(一部抜粋)
第27条 相続税の申告書
2 前項の規定により申告書を提出すべき者が当該申告書の提出期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合には、その者の相続人は、その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から10月以内に、政令で定めるところにより、その死亡した者に係る前項の申告書をその死亡した者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
想う相続税理士
租税特別措置法関係通達(一部抜粋)
69の4-25 共同相続人等が特例対象宅地等の分割前に死亡している場合
相続又は遺贈により取得した特例対象宅地等の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者(以下「共同相続人等」という。)によって分割される前に、当該相続(「第一次相続」という。)に係る共同相続人等のうちいずれかが死亡した場合において、第一次相続により取得した特例対象宅地等の全部又は一部が、当該死亡した者の共同相続人等及び第一次相続に係る当該死亡した者以外の共同相続人等によって分割され、その分割により当該死亡した者の取得した特例対象宅地等として確定させたものがあるときは、措置法第69条の4第1項の規定の適用に当たっては、その特例対象宅地等は分割により当該死亡した者が取得したものとして取り扱うことができる。