後見人・後見監督人・特別代理人の登場が必要な場合がある
相続人全員の署名押印があっても有効ではない遺産分割協議書もあり得る
民法(一部抜粋)
第二節 意思能力
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
意思能力のない方による法律行為は無効である
遺産分割協議は法律行為である
相続人の中に認知症の方がいて、その方が意思能力のない状態の場合には、その遺産分けの内容についてきちんと判断できない(その遺産分割協議の内容に同意していいのかどうかの判断ができない)ということになるため、その方が参加した遺産分割協議は有効とは言えない(成立しない)
「認知症の方=意思能力がない」というワケではない、認知症の方でも意思能力(判断能力)がある場合もある
後見人の登場
相続人の方に意思能力がない場合には、後見人が代理で遺産分割協議に参加する
まず、家庭裁判所に対して後見開始の審判申立てをする
裁判所HP(一部抜粋加工)
後見開始
1. 概要
家庭裁判所は、精神上の障害によって、判断能力が欠けているのが通常の状態の方については後見開始の審判を、判断能力が著しく不十分な方については保佐開始の審判を、判断能力が不十分な方については補助開始の審判をすることができます。
後見開始の審判とは、精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)によって判断能力が欠けているのが通常の状態の方(本人)を保護するための手続です。家庭裁判所は、本人のために成年後見人を選任し、成年後見人は、本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができ、また、成年後見人又は本人は、本人が自ら行った法律行為に関しては、日常生活に関するものを除いて、取り消すことができます。
後見監督人・特別代理人の登場
相続人が後見人となる場合には、後見監督人または特別代理人が選任される(選任の申立をする)
裁判所HP(一部抜粋加工)
家庭裁判所が職権で成年後見監督人を選任するのはどのようなときですか。
成年後見人に対する後見監督は家庭裁判所が行いますが、必要に応じて、家庭裁判所が選んだ成年後見監督人に成年後見人を監督させる場合もあります。
最近では、成年後見人による不正行為が社会問題となっており、家庭裁判所の後見監督をより適切に行うために被後見人の財産額が一定額以上あり、後見制度支援信託の利用がない場合に成年後見監督人を選任している家庭裁判所が多くなってきています。
裁判所HP(一部抜粋加工)
特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)
1. 概要
親権者である父又は母が、その子との間でお互いに利益が相反する行為(これを「利益相反行為」といいます。)をするには、子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。また、同一の親権に服する子の間で利益が相反する行為や、未成年後見人と未成年者の間の利益相反行為についても同様です。
利益相反行為とは、例えば、父が死亡した場合に、共同相続人である母と未成年の子が行う遺産分割協議など、未成年者とその法定代理人の間で利害関係が衝突する行為のことです。