相続税専門税理士の富山です。
今回は、「みなし配当課税の特例」というものについて、お話します。
非上場会社の株式をその会社に売ると・・・
あなたが、非上場会社A社の株式を持っているとします。
そのA社株式を、A社に買い取ってもらう場合、どうなると思いますか?
買い取ってもらうということは、A社に株式を譲渡することになりますから、「譲渡所得」として確定申告をすることになります。
この場合、税率が一律で20.315%になります(「分離課税」)。
配当せずに利益をため込んでいると・・・
非上場会社の場合、会社の利益が出ても、その利益を配当として株主に還元することは一般的ではありません。
会社は配当を払っても、それが経費にならないからです。
そうすると、儲かっている会社の場合、その会社の中に利益がどんどんたまっていきます。
あなたが株式を持っているA社もそういう会社だった場合、利益がたまっている会社なのですから、株価も高いはずです。
時価売買が原則ですから、あなたは高い金額でA社株式をA社に売ることになります。
この時、税務上は、あなたがそのA社から受け取るA社株式の売却代金を、次のように考えます。
「株の売却代金」+「今までもらっていなかった分をまとめてもらった配当金」
株主は出資した見返りとして配当金をもらう権利があります。
今までもらえなかった配当金を、売却時にまとめてもらった、という風に考えるのです。
配当金としてもらうと・・・
「結局お金がもらえるんだから、何だっていいじゃん!」という風に思うかもしれませんが、配当金としてもらうということは、先ほどの「譲渡所得」とは違い、「配当所得」になります。
「配当所得」は他の所得と合算して税金を計算し、所得の金額が大きくなればなるほど税率も上がります(「総合課税」)。
この配当所得の部分が大きいと、極端な言い方をすれば、半分が税金で持っていかれることになります。
相続した株式を会社に売った場合には特例がある!
通常の状態でA社株式をA社に売る場合には、上記のような取扱いになるのですが、相続したA社株式をA社に売る場合には、「全部を『譲渡所得』として計算することができる特例」があります。
参考 No.1477 相続により取得した非上場株式を発行会社に譲渡した場合の課税の特例国税庁「半分が税金で持っていかれる」ということはなく、20.315%の税負担で済む、ということです。
これにより、その残ったお金で相続税を払うことができる、というワケです。
会社に売る前に届出書の提出を忘れるな!
この特例の適用を受けるためには、そのA社株式を譲渡する時までに、「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」というものを、A社を経由して、A社の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出する必要があります。
想う相続税理士