相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続人の方が複数人いらっしゃる場合に、それぞれの相続人の方が、個々に別々の税理士に依頼してもいいか?ということについて、お話します。
その計算の仕組み上、相続税は別々に計算することはできない!
相続があって、その相続人が長女Aさんと次女Bさんの2人だったとします。
Aさんが相続した財産が3,000万円、Bさんが相続した財産が2,000万円だとします。
この場合、相手がいくら財産を相続したかについて関知せず、Aさんが「私は3,000万円財産を相続しました」、Bさんが「私は2,000万円財産を相続しました」と税務署に相続税の申告をすることができるかというと、できません。
財産の合計額が分からないと、相続税は計算できない!
上記の例ですと、他に計算要素がないものと仮定した場合、
- 財産の合計額:3,000万円+2,000万円=5,000万円
- 遺産に係る基礎控除額(相続税の非課税枠):3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
- 課税遺産総額:5,000万円△4,200万円=800万円
- 相続税の総額:800万円×1/2×10%+800万円×1/2×10%=80万円
- Aさんの相続税:80万円×60%(財産の取得割合3,000万円/5,000万円)=48万円
- Bさんの相続税:80万円×40%(財産の取得割合2,000万円/5,000万円)=32万円
財産全体に対する相続税(上の④)を計算し、それを財産を取得した割合に応じて配分する(上の⑤⑥)という計算の流れになっているため、自分が取得した財産だけでは、相続税は計算できないようになっているのです。
計算さえできれば別々に相続税の申告をすることは可能だが・・・
一般的には、相続税の申告は財産を取得した方が連名で行います。
しかし、手続き上は、財産を取得した方が個別に相続税の申告をすることが可能です。
そのためには、上記のような相続税の仕組みの関係上、相手が取得した財産の金額を把握する必要があります。
お互いが取得した財産を教え合ったとしても、AさんとBさんの仲が悪かったりすると、取得したことを内緒にしたい財産については教えない、なんてことがあったりします。
AさんがBさんに内緒にする財産Xがあるとします。
「税務署に見つかったら自分が罰金を払えばいい」と軽く考えていたとします。
内緒にすることにより、Bさんの相続税の申告は間違った数字となります。
Aさんが自分の申告でも財産Xを申告しなければ、AさんとBさんの相続税に計算上の整合性は取れますが、税務署に見つかり修正申告になれば、過少申告加算税や延滞税がかかります。
この場合、これらの税金を払うのは、Aさんだけではありません。
Bさんも払うことになります。
AさんはBさんから財産を隠していたことを責められるだけでなく、それにより、余計な税金の負担をかけたことについても責められます。
Aさんが自分に過少申告加算税や延滞税がかかるのを避けるために、Bさんには内緒にしつつ、自分の申告では財産Xを申告すると、Aさんの相続税とBさんの相続税に整合性が取れなくなるため、税務調査を誘発します。
結果的に、Bさんに過少申告加算税や延滞税がかかり、AさんはBさんから上記同様に責められることになります。
想う相続税理士
また、複数の税理士に依頼することになれば、その分、税理士報酬もかかりますので、ご注意を。