相続税専門税理士の富山です。
今回は、同族会社の社長が亡くなった場合の相続における留意点について、お話します。
死亡退職金はみなし相続財産
同族会社の社長が亡くなった場合、死亡退職金の支給を検討しましょう。
相続の発生により、亡くなった方に支給されるべきであった退職手当金等(死亡退職金)を受け取った場合、その死亡退職金は相続税の課税対象となります(死亡後3年以内に支給が確定した場合)。
その死亡退職金を相続人が受け取った場合には、
500万円×法定相続人の数
で計算される非課税枠(非課税限度額)があります。
非上場株式も相続財産
その亡くなった社長が同族会社の株式を所有していた場合、その株式(非上場株式)も相続税の課税対象になります。
その同族会社の業績が良かったりして評価額が高くなっていると、相続税の納税が大変です。
死亡退職金を受け取ると相続税の課税対象になってしまいますが、非上場株式に係る相続税の納税資金に充てるための原資として、会社から死亡退職金という名の現金を引っ張れれば、相続税の納税もラクになります。
後継者がいる場合(例えば長男が次期または現社長の場合)、会社の安定経営のため、相続税の納税が大変でも、その株式を相続して自分のモノにしたいと考えるハズです。
しかし、亡くなった方に配偶者がいる場合、配偶者が取得すれば、「配偶者の税額軽減」の適用により相続税が安くて済みます(かからない場合もあります)。
死亡退職金は非上場株式の評価に影響する
相続税申告における非上場株式の評価額は、「①類似業種比準価額」と「②純資産価額」をミックスして計算します。
死亡退職金を支給する場合、②純資産価額の計算上、死亡退職金を(亡くなった日時点では支払っていなくても未払金として)負債計上することができます。
それにより、②純資産価額は下がります(相続税の節税につながります)。
それに対して、①類似業種比準価額は、亡くなった日の属する事業年度より前の事業年度(直前事業年度等)の数字を元に計算するため、死亡退職金の支給が計算に加味されず、下がりません(相続税の節税につながりません)。
いったん配偶者が相続するのも手
死亡退職金の支給により、亡くなった日の属する事業年度の「翌事業年度」は、①類似業種比準価額が下がります。
そこで、相続の時には配偶者が(相続税ゼロまたは少ない相続税で)取得し、②純資産価額だけでなく、①類似業種比準価額も下がったところで(翌事業年度に)長男に贈与する、というのも一つの手です(配偶者と長男の関係が良いという前提です)。
この場合、暦年課税だと贈与税が高くなってしまう場合には、相続時精算課税の選択を検討しましょう。
将来、配偶者の相続の時に相続税の課税対象となりますが、(相続の時に評価額が上がっていても)贈与時の下がった評価額での課税となります。
想う相続税理士