相続税専門税理士の富山です。
今回は、同族会社の社長がお亡くなりになり、その方がその会社の株式を所有していた場合、会社が死亡退職金を支払うことにより、相続財産である同族会社の株式の評価額が下がるかどうか、ということについて、お話します。
同族会社の株式は、その会社の規模等によって、評価方法が変わります。
大会社の場合
原則として、類似業種比準方式により評価します。
その会社の「配当」・「利益」・「純資産」を基に計算しますが、直前期末以前の数字を使うため、亡くなってから死亡退職金を支払っても、株価(類似業種比準価額)に影響を与えることはできません。
ただし、大会社は純資産価額方式で評価しても良いことになっています。
純資産価額方式も、直前期末(過去)の数字を使うため、亡くなった後に死亡退職金を支払っても、株価に影響はないように思われるかもしれません。
しかし、死亡退職金を支払った場合には、直前期末の「負債」として計上することができるため、純資産価額が下がる可能性があります。
多額の死亡退職金を支払った場合には、その分、株価の引き下げ効果も大きくなります。
想う相続税理士
今後の相続税対策には有効
死亡退職金を支払っても、類似業種比準価額に影響はない、とお話しましたが、それは相続に関するお話です。
相続後の株価(類似業種比準価額)は下がります。
死亡退職金を支払うことにより、計算要素である「利益」や「純資産」が減少するからです。
これは相続税対策としての贈与のチャンスです。
相続の時に株価が高いのであれば、いったん配偶者が相続することも検討しましょう。
配偶者に認められている「配偶者の税額軽減」により、税負担が下がります(完全に無税の場合も有)ので、相続はそれで乗り切るのです。
そして、相続後に株価が下がったところで、その低い株価で子供が配偶者から贈与を受けるのです。
中会社の場合
原則として、類似業種比準価額と純資産価額の併用方式(ミックス)で評価します。
純資産価額部分には、死亡退職金の支給が効きます(株価が下がります)。
さらに、類似業種比準価額の部分を純資産価額とすることができます(つまり純資産価額方式のみで評価できます)ので、そのパターンの株価も試算し、その方が低ければ、そちらを採用しましょう。
小会社の場合
原則として、純資産価額方式により評価します。
死亡退職金の支給は有効です(株価が下がります)。
さらに、類似業種比準価額と純資産価額の50%ずつのミックスも認められているので、そのパターンの株価もチェックします。
小会社の場合、大会社等と比較して、業績が悪い可能性があるからです。
業績が悪ければ、類似業種比準価額は下がりやすいのです。
そのようなことも踏まえて、死亡退職金の支給が株価にどのように影響するのかを見極めましょう。
想う相続税理士秘書
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