相続税専門税理士の富山です。
今回は、社長の相続が発生し、同族会社が死亡退職金を支給した場合に、その社長がその同族会社の株主である(つまり、その社長がオーナー社長だった)ときの、相続税への影響について、お話します。
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死亡退職金は相続税の課税対象
ご遺族の方が死亡退職金の支給を受けた場合、その死亡退職金は相続税の課税対象になります。
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ただし、相続人の方が受け取った場合には、
500万円×法定相続人の数
の非課税枠を適用することができます。
法定相続人が3人の場合、
500万円×3人=1,500万円
となりますので、1,500万円以下であれば、相続税はかかりません(1,500万円を超えた部分に相続税が課税されます)。
死亡退職金の支給は会社の株式の評価額に影響を与える
オーナー社長に相続が発生すると、その社長が保有していた同族会社の株式も相続税の課税対象となります。
その同族会社の株式は、「類似業種比準価額」と「純資産価額」をミックスして計算します。
死亡退職金の支給は、「純資産価額」の金額に影響を及ぼします。
死亡退職金の支給
死亡退職金の支給により、会社から現預金が出ていくことになります。
つまり、資産が減ります。
その分、会社の株式の評価額は下がります。
相続開始時点ではまだ払っていませんので、純資産価額の計算上、「負債」として計上します。
死亡保険金の受取り
会社が、社長の死亡退職金の支給に備えて、社長に生命保険を掛けていて、その生命保険金を受け取ると、会社には現預金が入ってくることになります。
つまり、資産が増えます。
その分、会社の株式の評価額は上がります。
相続開始時点ではまだ受け取っていませんので、純資産価額の計算上、「生命保険金請求権」という「資産」として計上します。
また、この場合、会社が保険掛金(保険積立金)として貸借対照表に計上している金額は、「生命保険金請求権」を計上する代わりに、ないモノとして考えます(純資産価額の計算上、計上しません)。
生命保険金を受け取った会社は儲けをどう計算する?
生命保険金を受け取った会社は、毎年(とか毎月とかに)保険料をずっと支払ってきたハズです。
ザックリ言うと、そのうちの経費にしなかった分が保険掛金として貸借対照表に計上されています。
会社が、例えば1億円の生命保険金を受け取った場合、1億円トクした(儲かった)ワケではありません。
何もしないで1億円が会社に入ってきたワケではなく、保険料を支払ってきたから生命保険金を受け取ることができたのです。
ザックリ言うと、この1億円から貸借対照表に計上されている保険掛金(例えば3,000万円)を控除した金額(1億円△3,000万円=7,000万円)を会社のトク(儲けた金額)と考えます。
儲けに対する法人税等の負担も考慮する
死亡退職金の金額が5,000万円だったとします。
そうすると、
②生命保険金の受取りによる黒字:7,000万円
を相殺した金額(7,000万円△5,000万円=2,000万円)に法人税等が課税されることになります。
法人税等の納付により、会社から現預金が出ていくことになります。
つまり、資産が減ります。
その分、会社の株式の評価額は下がります。
相続開始時点ではまだ納付していませんので、純資産価額の計算上、「受取保険金に対する法人税等」等という「負債」として計上します。
この場合には税率を37%で計上することになっています(2,000万円×37%=740万円)。
同族会社が赤字(欠損法人)の場合
法人税の計算には、その事業年度に儲けた金額にダイレクトに法人税を課税するのではなく、過去の事業年度の赤字(「欠損金」)を控除してから課税する仕組みがあります。
上記の「受取保険金に対する法人税等(負債)」の計算も、その法人税の課税の実態に合わせて、欠損金を加味します。
欠損金が1,000万円だった場合には、「受取保険金に対する法人税等(負債)」は(740万円ではなく)、
(2,000万円△1,000万円)×37%=370万円
となり、欠損金が3,000万円だった場合には、
2,000万円△3,000万円<0円 ∴0円
となるため(法人税等が課税されないため)、「受取保険金に対する法人税等(負債)」は「0円」となります。
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