相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続放棄と死亡保険金の関係について、お話します。
死亡保険金は本当は相続財産じゃない!
亡くなった方が生命保険に入っていて、その死亡により保険金を受け取った場合、その死亡保険金は亡くなった方からもらった(相続した)モノではありません(亡くなった方が所有していたモノではありません)。
ですから、相続財産ではありません。
しかし、その死亡に起因して受取人の方が経済的利益を受けている点に着目し、相続財産と「みなして」、相続税が課税されることになっています。
死亡保険金は相続放棄しても受取り可能
相続財産ではありませんので、他の相続人と話し合って、誰を取得者(受取人)にするか決める必要もありません。
他の相続人に文句を言われても、契約上の受取人に支払われます。
死亡保険金は「受取人の固有の財産」ですので、相続とは関係ありません。
ですから、相続放棄をしても、死亡保険金を受け取ることができます。
相続放棄することにより税務メリットも放棄することになる
死亡保険金は、「遺族の生活保障」としての側面があるため、相続税も優遇されています。
「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるのです。
ところが、この非課税枠の適用には条件があります。
相続税法(一部抜粋)
第12条 相続税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
五 相続人の取得した第3条第1項第1号に掲げる保険金
相続人が取得した死亡保険金しか、非課税枠の適用は受けられないのです。
民法
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
そして、相続放棄をした方は、相続人ではなくなります。
したがって、非課税枠の適用を受けることができなくなってしまうのです。
想う相続税理士秘書
財産を取得しない=相続放棄?
財産を取得しない=相続放棄ではありません。
亡くなったAさんの相続人Bさん・Cさん・Dさんが集まって、Aさんの遺産について遺産分割協議(遺産分けの話し合い)を行い、Bさんが全財産を相続する、という結論に達したとします。
この場合、Cさん・Dさんは相続財産を全く受け取らないワケですが、これは相続放棄ではありません。
民法
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
「相続放棄」とは、家庭裁判所で手続きするモノであり、話し合いで財産をもらわないことは、「相続放棄」ではありません。
想う相続税理士