相続税専門税理士の富山です。
今回は、宅地等への転用許可を受けた農地の評価・課税・申告上の注意点について、お話します。
贈与税の申告では時期と地目に注意
市街化調整区域にある農地を、農地法第5条の許可を受けて贈与により取得した場合、
- その農地をもらった時に贈与があったとは考えない
- 農地を宅地等に転用する許可を受けた時に税務上は贈与があったものと考える
- 宅地等に転用する許可を受けた土地は税務上「市街地農地」に該当する
- 市街地農地は原則として「宅地比準方式」で計算する
想う相続税理士秘書
また、「贈与があったものと考える」時期については、一定の要件に該当する場合、農地法の許可に関する書類を農業委員会に提出した日とすることができます。
想う相続税理士
固定資産税の課税は農地のままの状態でも宅地並み
宅地等に転用する許可を受けた農地は、そのまま作物を栽培していても、その固定資産税は上がります。
宅地等しての潜在的な価値があるため、固定資産税は「宅地(等)介在農地」として、宅地並みに課税されます。
現況は農地でも、農地として課税されない点に注意しましょう。
姫路市HP・FAQ(一部抜粋加工)
農地転用許可を受けた土地(畑)の固定資産税が上がりました。今でも作物を栽培しているのですが、現況課税ではないのですか。
回答
農地転用がなされた土地については、宅地等としての潜在的価値を有しており、売買価格も宅地等に準じた水準にあると考えられますので、売買等において制限があるその他の一般の農地との均衡上、農地としてではなく、宅地並の評価となります。しかし、農地を宅地にするのには造成が必要となりますので、宅地としての評価額から造成費相当額を控除して評価します。
相続税の申告では現地調査だけで地目を判断しちゃダメ
相続税の申告の際、相続財産であるA農地とB農地が市街化調整区域の同じエリアに所在していたとします。
その場合に、「現地調査で確認したら、A農地もB農地もまったく同じように耕作されていたので、どちらも通常の農地として同じように評価」なんてしたら、間違ってしまう可能性があります。
B土地が宅地等への転用の許可を受けていれば、B土地については「市街地農地」として評価しなければならないからです。
このような場合、ちゃんと固定資産評価証明書や固定資産税の課税明細書等を確認すれば、(相続のタイミングにもよりますが)B土地の課税(現況)地目が「宅地(等)介在農地」になっていたり、固定資産税が高くなっていたりするため、「どちらも通常の農地として同じように評価」するミスを避けられる場合もあるでしょう。
想う相続税理士秘書
姫路市HP・FAQ(一部抜粋加工)
農地を宅地にする転用の許可をとり造成も終わったのに、登記の地目が変わっていないのですが。
回答
転用の許可(受理)を受けただけでは、登記簿上の地目が自動的に変わるわけではありません。
転用事業の完了後、法務局で地目変更登記の手続きを行ってください。
想う相続税理士
誤りやすい項目集(資産税関係)
令和6年12月
関東信越国税局 資産課税課(一部抜粋加工)
転用許可を受けた農地の評価
【誤り事例】
市街化調整区域内にある農地について、農地法第5条の許可を受けて贈与された場合に、農地としての固定資産税評価額に農地の評価倍率を乗じて評価した。
【留意事項】
農地法第5条の許可を受けている農地については、評価上は市街地農地となりますので、その農地が宅地であるとした場合の価額からその農地を宅地に転用する場合に通常必要と認められる宅地造成費相当額を控除して評価します。