【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続税の小規模宅地等の特例と所得税の収入・必要経費の関係

相続税専門税理士の富山です。

今回は、不動産賃貸に係る相続税と所得税の関係について、お話します。


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小規模宅地等の特例における「有償(相当の対価)貸付け要件」

相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「①特定事業用宅地等」「②特定同族会社事業用宅地等」「③特定居住用宅地等」「④貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。

このうち、「④貸付事業用宅地等」については、「有償(相当の対価)」による貸付け(賃貸)が要件となっています。

「②特定同族会社事業用宅地等」も同様です。

②の場合には、土地または建物の同族会社への有償(相当の対価)貸付けが要件となります。

想う相続税理士秘書

所得税における生計一親族への支払の必要経費不算入

所得税法(一部抜粋加工)
第56条 事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例
居住者と生計を一にする配偶者その他の親族がその居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には、その対価に相当する金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入しないものとし、かつ、その親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、その居住者の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。この場合において、その親族が支払を受けた対価の額及びその親族のその対価に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は、当該各種所得の金額の計算上ないものとみなす。

上記でお話したように、相続税の世界の賃貸は「タダじゃダメ(有償賃貸で)」(タダだと小規模宅地等の特例は適用不可)なのですが、所得税の世界では、(それが生計一親族間だと)「有償賃貸をしてもタダ扱い」になります。

逆に事業上タダで賃貸しても文句は言われません(課税は生じません)。

相続税をとる?それとも所得税をとる?

夫Aさん・妻Bさんの夫婦がいたとします。

夫Aさんは、妻Bさんの父Cさん(義父・生計別)が所有する土地Dを有償(相当の対価)で借りて店舗を建てて商売をしていたとします。

父Cさんが亡くなった場合、土地Dは有償(相当の対価)貸付け要件を満たすので、小規模宅地等の特例が適用できる可能性があります。

この土地Dを妻Bさん(父Cさんの子)が相続したとします。

夫Aさんは、今まで父Cさんに地代を支払っていましたが、これからは妻Bさんに支払うことになります。

しかし、その妻Bさんに支払う地代は、上記の「所得税における生計一親族への支払の必要経費不算入」の決まりにより、必要経費になりません。

経費にならないのであれば、地代を妻Bさんに支払わない方がいいのでしょうか?

この場合、地代の支払を継続すべきモノと思われます。

地代の支払を継続することにより、「有償(相当の対価)貸付け要件」を満たし、小規模宅地等の特例のその他の適用要件を充足すれば、妻Bさんの相続税は安くなります。

また、その地代は夫Aさんの事業における必要経費にはなりませんが、妻Bさんの収入にもなりませんから、夫婦全体で見れば、損はしていないのです。

払っても払わなくても所得税が同じなら、相続税の特例適用の旨味を選択すべきモノと思われます。

想う相続税理士

所得税の収入・必要経費の側面から見ると、夫Aさん・妻Bさんの間の地代のやり取りは、どうせ経費にならないので「どうでもいい」問題ですが、相続税の小規模宅地等の特例の側面から見ると、「相当の対価」「得ている」ことが要件となっていますから、後で税務調査で指摘されないよう、夫婦間でも振込で地代の支払をした方がよいモノと思われます。