相続税専門税理士の富山です。
今回は、土壌汚染のある土地について、浄化・改善費用相当額を控除できるか争われた事例について、お話します。
土壌汚染地はいろいろな金額を控除して評価する
国税庁HP(一部抜粋加工)
土壌汚染地等の評価の考え方について(情報)
⑶ 評価方法
土壌汚染地の価額は、汚染がないものとした場合の価額から、浄化・改善費用に相当する金額、使用収益制限による減価に相当する金額及び心理的要因による減価に相当する金額を控除した金額によって評価する。
土壌汚染地については、まず、土壌汚染がないモノとして評価し、その金額から、浄化・改善費用に相当する金額等を控除して、最終的な評価額を算出します。
想う相続税理士秘書
土壌汚染を放置していい場合には安く評価できない?
出典:TAINS(J125-2-04)(一部抜粋加工)
令03-12-01公表裁決
原処分庁は、評価対象地(本件各土地)は法令等により土壌汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じておらず、本件各土地の価格形成に影響を及ぼすような土壌汚染は認められないから、本件各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から浄化・改善費用相当額を控除する必要はない旨主張する。
土壌汚染地を評価する際、「浄化・改善費用に相当する金額」を控除するのは、「土壌汚染地は相続した後にその土地を汚染のない状態に戻すための費用負担が生じる」からなのでしょうか?
もし、相続した方(土地の所有者)が「別に土壌汚染地のままでいい」と考えた場合、費用負担は生じません。
でも、法的に土地の所有者に浄化・改善が求められる場合には、「別に土壌汚染地のままでいい。汚染除去等の対応はしない」と考えていても、費用負担は生じることになります(基本的に所有者が負担します)。
ということは、「法令又は契約等により、汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じ、その除去等の費用が発生することが確実」であることが土壌汚染地を安く評価するための要件になるのでしょうか?
一定の土壌汚染があれば汚染除去等の対応をしなくても評価減は可能
本件各土地は、相続開始日において、土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質を地中に含有していたことが認められ、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であることから、本件各土地の評価に当たり、浄化・改善費用相当額を控除すべきである。そして、本件各土地及びその周辺の状況や土壌汚染の状況から、本件各土地について最有効使用ができる最も合理的な土壌汚染の除去等の措置は掘削除去であると認められるところ、請求人が主張する土壌汚染対策工事の各見積額(本件各見積額)の算定過程に特段不合理な点は見当たらず、浄化・改善費用の金額として相当であると認められるので、本件各土地の評価に当たり、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、浄化・改善費用相当額として本件各見積額の80%相当額を控除して評価するのが相当である。
実際に汚染除去等をしなくても、法律等で汚染除去等が義務付けられていなくても、安く評価することは可能、ということです。
想う相続税理士
その減価要因は相続税評価額に加味されるべきです。