相続税専門税理士の富山です。
今回は、小規模宅地等の特例の「同意」の要件について、お話します。
適用できる面積に限りがあるから・・・
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があります。
この特例を適用できる面積には限度があるため、(亡くなった方の)自宅敷地とアパート敷地のどちらも適用できる、というような場合、面積の関係上、自宅敷地に適用したら、アパート敷地には適用できない、ということが起こります。
自宅敷地とアパート敷地を相続で取得した方がそれぞれ異なる場合、特例の適用を受けるためには、どちらかが自分の取得した土地に適用することをあきらめて、適用を相手に譲る、ということをしなければならないのです。
ですから、「誰が取得したどの土地に適用するか」ということについての取得者間での同意が必要となります。
そこで、小規模宅地等の特例を適用する場合には通常、相続税の申告書の「第11・11の2表の付表1 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書」を使うことになるのですが、この付表の「1 特例の適用にあたっての同意」の氏名欄に、その同意した人の氏名を記入し、各取得者がその適用内容に同意していることを示すことになっています。
同意を得なければならない人とは?
この「1 特例の適用にあたっての同意」の部分には、次のように書かれています(一部抜粋加工)。
この欄は、小規模宅地等の特例の対象となり得る宅地等を取得した全ての人が次の内容に同意する場合に、その宅地等を取得した全ての人の氏名を記入します。
(注)小規模宅地等の特例の対象となり得る宅地等を取得した全ての人の同意がなければ、この特例の適用を受けることはできません。
上記の文章の中の「特例の対象となり得る」がポイントです。
特例の対象と「なる」ではなく、「なり得る」なのです。
なり「得た」ではなく、なり「得る」なのです。
特例の適用を邪魔した人の同意も必要
小規模宅地等の特例には、「取得者」の要件があります。
自宅敷地を、Aさんが取得すれば特例の適用が受けられるけれども、Bさんが取得したら受けられない、ということがあるのです。
自宅敷地をBさんが欲しがったので、それはBさんに譲って、Aさんがアパート敷地を取得したとします。
アパート敷地は、貸付事業用宅地等として、特例の適用が受けられるとします。
この場合、「同意の氏名欄」には、特例の適用が受けられるAさんの名前だけを記入すればいいのかというと、そうではなく、Aさんが取得すれば特例の適用が受けられる、つまり、「特例の対象となり得る」自宅敷地を取得したBさんの名前も記入しなければならない、つまり、Bさんの同意も必要ということになるのです。
想う相続税理士