相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における隠ぺい仮装行為に係る重加算税について、お話します。
隠ぺい仮装行為により重加算税が課税される場合がある
国税通則法(一部抜粋)
第68条 重加算税
第65条第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、かつ、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書又は第23条第3項に規定する更正請求書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
2 第66条第1項の規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、かつ、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書若しくは更正請求書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、無申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る無申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の40の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
上記にあるとおり、一定の隠ぺい仮装行為は重加算税の対象となり、35%・40%等の追加課税が発生します。
相続税の申告においてはどのような行為がその対象になるかについて、下記のような事務運営指針が出ています。
国税庁HP(一部抜粋加工)
相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
標題のことについて、国税通則法(以下「通則法」という。)第68条第1項若しくは第2項又は第4項の規定の適用に関し留意すべき事項等を下記のとおり定めたから、今後処理するものからこれにより取り扱われたい。
第1 賦課基準
通則法第68条第1項又は第2項に規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」とは、例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合をいう。
1 相続税関係
(1) 相続人(受遺者を含む。)又は相続人から遺産(債務及び葬式費用を含む。)の調査、申告等を任せられた者(以下「相続人等」という。)が、帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書その他財産に関する書類(以下「帳簿書類」という。)について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿をしていること。
(2) 相続人等が、課税財産を隠匿し、架空の債務をつくり、又は事実をねつ造して課税財産の価額を圧縮していること。
(3) 相続人等が、取引先その他の関係者と通謀してそれらの者の帳簿書類について改ざん、偽造、変造、虚偽の表示、破棄又は隠匿を行わせていること。
(4) 相続人等が、自ら虚偽の答弁を行い又は取引先その他の関係者をして虚偽の答弁を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、相続人等が課税財産の存在を知りながらそれを申告していないことなどが合理的に推認し得ること。
(5) 相続人等が、その取得した課税財産について、例えば、被相続人の名義以外の名義、架空名義、無記名等であったこと若しくは遠隔地にあったこと又は架空の債務がつくられてあったこと等を認識し、その状態を利用して、これを課税財産として申告していないこと又は債務として申告していること。
上記に「相続人等が、課税財産を隠匿し」とありますが、例えば、Aという相続財産を長男がこっそり隠し(隠匿し)、でも、遺産分割協議書上はA財産を相続するのは隠した長男ではなく二男である、といったような場合、隠した長男はその相続財産を相続しないので、長男に重加算税は課税されないのでしょうか?
課税されるとしたら、そのA財産を相続する二男に重加算税が課税されるのでしょうか?
出典:TAINS(相続事例大阪局WAN2705)(一部抜粋加工)
隠ぺい又は仮装の行為に係る財産をその行為者が取得しなかった場合
【照会要旨】
隠ぺい又は仮装の行為者である相続人がその隠ぺい又は仮装の行為に係る財産を取得しなかった場合であっても、その者に対して重加算税が課されるか。
特段の隠ぺい仮装行為という行動をした人に課税される
【回答要旨】
通則法第68条第1項又は第2項にいう「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実」とは、相続人各人が取得した財産のみを対象とするのではなく、被相続人の遺産を対象とする一切の事実を意味するものと解され、隠ぺい又は仮装の行為者がその行為に係る財産を取得しなかった場合であっても、その者の行為に基づき増加することとなった相続税額について重加算税が課される。
なお、隠ぺい又は仮装の行為者と認められない相続人(その行為者に対して遺産の調査、申告等を任せた者を除く。)に対しては、隠ぺい又仮装の行為に係る財産を取得したか否かにかかわらずその増加する相続税額について重加算税を課し得ないのであるから留意する。
長男には重加算税が課税され、二男には課税されません。
想う相続税理士