相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺産分けにおいて代償分割を採用した場合における、代償財産を交付した方、代償財産の交付を受けた方の相続税の課税価格の計算について、お話します。
代償財産の金額をマイナスし、プラスする
相続が発生し、相続人が長男と二男の2人だとします。
財産は土地1ヶ所だけで、相続税評価額は1億円だとします。
財産が1つしかないため、分けるのが難しい状況です。
このような場合、片方が財産を取得して、もう片方にお金等を渡す方法があります。
これを「代償分割」と言います。
その土地は長男が相続し、長男はその代わりとして、二男に代償分割金として5,000万円の現金を支払ったとします。
この場合、長男・二男の相続税の課税価格は、原則として次のようになります。
二男:0円+代償分割金5,000万円=5,000万円
他の要因を考慮せずにザックリとお話すると、財産の取得割合は50%ずつ(1億円×50%=5,000万円ずつ)で同じですので、相続税についても、全体の相続税を50%ずつ負担することになります。
相続税法基本通達(一部抜粋)
11の2-9 代償分割が行われた場合の課税価格の計算
代償分割の方法により相続財産の全部又は一部の分割が行われた場合における法第11条の2第1項又は第2項の規定による相続税の課税価格の計算は、次に掲げる者の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによるものとする。
(1) 代償財産の交付を受けた者 相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額と交付を受けた代償財産の価額との合計額
(2) 代償財産の交付をした者 相続又は遺贈により取得した現物の財産の価額から交付をした代償財産の価額を控除した金額
(注) 「代償分割」とは、共同相続人又は包括受遺者のうち1人又は数人が相続又は包括遺贈により取得した財産の現物を取得し、その現物を取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して債務を負担する分割の方法をいうのであるから留意する。
時価ベースや合理的と認められる方法によって計算することも可
長男が相続した土地は1億円、とお話しましたが、これは「相続税評価額」です。
「時価」ではありません。
この土地の時価が1.25億円(1億2,500万円)だとすると、上記の計算では、1.25億円のうちの5,000万円(40%部分)しかもらっていない二男が、全体の相続税のうちの50%部分を負担することになります。
そのため、相続税の課税価格を次のように計算することも認められています。
二男:0円+(代償分割金5,000万円×1億円/1.25億円=4,000万円)=4,000万円
この方法だと、財産の取得割合は長男60%・二男40%ということになるため、相続税についても、全体の相続税のうち、60%を長男、40%を二男が負担することになります。
相続税法基本通達(一部抜粋)
11の2-10 代償財産の価額
11の2-9の(1)及び(2)の代償財産の価額は、代償分割の対象となった財産を現物で取得した者が他の共同相続人又は包括受遺者に対して負担した債務(以下「代償債務」という。)の額の相続開始の時における金額によるものとする。
ただし、次に掲げる場合に該当するときは、当該代償財産の価額はそれぞれ次に掲げるところによるものとする。
(1) 共同相続人及び包括受遺者の全員の協議に基づいて代償財産の額を次の(2)に掲げる算式に準じて又は合理的と認められる方法によって計算して申告があった場合 当該申告があった金額
(2) (1)以外の場合で、代償債務の額が、代償分割の対象となった財産が特定され、かつ、当該財産の代償分割の時における通常の取引価額を基として決定されているとき
次の算式により計算した金額
A×C/B
(注) 算式中の符号は、次のとおりである。
Aは、代償債務の額
Bは、代償債務の額の決定の基となった代償分割の対象となった財産の代償分割の時における価額
Cは、代償分割の対象となった財産の相続開始の時における価額(評価基本通達の定めにより評価した価額をいう。)
想う相続税理士