【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

代償分割金を支払う場合にはその原資に注意しないと贈与税課税のリスクがある

相続税専門税理士の富山です。

今回は、代償分割の注意点について、お話します。


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代償分割は大変便利な遺産分割方法

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算
概要
代償分割とは、遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して債務を負担するもので現物分割が困難な場合に行われる方法です。

相続人が長男・二男のお2人で、相続財産がご自宅の土地建物(計1億円)のみの場合、長男がそのご自宅を相続し、二男に代償分割金5,000万円を支払うと、

長男の正味の取得財産(相続税の課税価格):1億円△支払った代償分割金5,000万円=5,000万円
二男の取得財産(相続税の課税価格):受け取った代償分割金5,000万円
となり、(数字上は)それぞれ5,000万円相当額の財産を同じように相続した、ということになります。

上記には「現物分割が困難な場合に行われる方法」とありますが、現物分割が簡単な場合、例えば、相続財産が預貯金の場合でもよく、長男が1億円の定期預金を相続し、二男に5,000万円の代償分割金を支払う、というようなこともできます。

生命保険金を代償分割金の原資にすることはできない

出典:TAINS(相続事例大阪局R050000)(一部抜粋加工)
誤りやすい事例(相続税関係 令和5年版) 大阪国税局資産課税課
(生命保険金を目的とした代償分割をすることの可否)
【誤った取扱い】
19 長男は、被相続人の死亡を保険事故とする生命保険金1億円(保険料の負担者は被相続人)を取得したが、本来の相続財産が5,000万円しかないことから、相続財産を取得しないこととするほか、受け取った生命保険金から現金2,500万円を次男に支払うこととした。
相続税の申告に当たっては、支払った2,500万円を代償債務として課税価格から控除した。
【正しい取扱い】
19 代償分割は、本来の相続財産を現物分割することに代えて行われるものであるところ、保険金は受取人固有の財産であって代償債務の目的となるべき現物分割の対象財産となりえないから、2,500万円を代償債務として課税価格から控除することはできない。
なお、支払った2,500万円については、次男に対する贈与となる。

「相続財産を取得していないのに代償分割金を支払った」ということは、長男は自分のお金を原資として代償分割金を支払った、ということになります。

その「お金」が、相続税の課税対象となる「生命保険金」だったとしても、生命保険金は保険契約により既に受取人が決まっている「受取人固有の財産」であり、遺産分割協議の対象外となるため、その生命保険金から支払っても代償債務とならず(相続税が安くならず)、二男には贈与税が課税されてしまいます(ダブルパンチ)。

相続時精算課税贈与財産を代償分割金の原資にすることはできない

出典:TAINS(相続事例大阪局R050000)(一部抜粋加工)
誤りやすい事例(相続税関係 令和5年版) 大阪国税局資産課税課
(相続時精算課税の適用を受けた贈与財産を目的とした代償分割をすることの可否)
【誤った取扱い】
20 長男は、5年前に2億円の贈与を受け、相続時精算課税制度を選択して贈与税の申告をした。
本年、被相続人が死亡したが、本来の相続財産が1億円しかないことから、相続財産を取得しないこととするほか、次男に対して自らの預金から5,000万円を支払うこととした。
相続税の申告に当たっては、支払った5,000万円を代償債務として課税価格から控除した。
【正しい取扱い】
20 代償分割は、本来の相続財産を現物分割することに代えて行われるものであるところ、過去に贈与を受けた財産は代償債務の目的となるべき現物分割の対象財産となり得ない(特別受益として法定相続分の計算上考慮される場合はある。民法903)から、5,000万円を代償債務として課税価格から控除することはできない。
なお、支払った5,000万円については、次男に対する贈与となる。

「相続財産を取得していないのに代償分割金を支払った」ということは、長男は自分のお金を原資として代償分割金を支払った、ということになります。

その「お金」が、相続税の課税対象となる「相続時精算課税贈与財産」だったとしても、贈与が成立していれば、その財産は長男のものであり、遺産分割協議の対象外となるため、その相続時精算課税贈与財産から支払っても代償債務とならず(相続税が安くならず)、二男には贈与税が課税されてしまいます(ダブルパンチ)。

想う相続税理士

代償分割金の金額を検討する際には、「贈与にならないか」をきちんと確認しましょう。