相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺言者の意思が尊重されるためには、どの形式の遺言がいいのか、について、考えてみたいと思います。
自筆証書遺言は書くのがラクだから一番いい?
遺言を書く、という場合、それだけで何だか重圧がかかってきそうです。
その上、公証役場や法務局というお堅いところに行かなければならないとなったら、さらに億劫に感じてしまうかもしれません。
「そんなお堅いところに行って難しいことをいろいろ言われて大変な思いをするよりも、自分で書いて家に保管しておいても有効になるんだったら、そのほうがラクだしいいんじゃない?」と思われるかもしれません。
形式上の不備等があり、遺言が無効になる場合もあります。
それを避けるためには、公正証書遺言がベストです。
形式上の不備等があることによる遺言が無効になるリスクについては考えないとしても、自筆証書遺言には別のリスクがあります。
自筆証書遺言の場合のリスクとは?
一つは、遺言が発見されないリスクです。
亡くなった後、遺言が最後まで発見されなければ、遺言がないモノとして遺産分割協議が行われたり、それがまとまらなければ、家庭裁判所の調停等に進むでしょう。
2つ目は、生前の遺産争い(財産の取り合い)を発生させるリスクです。
生前から自筆証書遺言があることが相続人にバレると、相続人は、自分にとって有利な内容になっているか、気になります。
場合によっては、自分に有利なように遺言を作成しなおして欲しい(まだ書いていなければ自分に有利なように書いて欲しい)、なんて言われることもあるでしょう。
他人(第三者)が絡んでいれば、相続人にも「変なことは言えない」という抑止力が働くかもしれませんが、自筆証書遺言だと、それが難しい場合があります。
それなら自筆証書遺言は誰に渡しておけばいいの?
発見されないリスクを避け、かつ、遺言があることを生前に知られて財産の取り合いが発生しないようにするためには、弁護士の先生などに預ける、というのも一つの手です(ただし、その弁護士の先生などが、相続の発生をすぐに知ることができるような段取りや環境が必要です)。
もちろん、相続人のどなたかを遺言執行者に指定して、その方に渡しておく、というのでもいいでしょう(発見されないリスクは回避できるでしょう)。
ただし、その遺言の内容が、遺言執行者の方に有利な内容になっていると、他の相続人が、(形式上の不備等がなかったとしても)「これは本当に遺言者(亡くなった方)が書いたものか?」「無理矢理書かされたものではないか?」「遺言者の意思が反映しているのか?」というようなことを言い出すことも考えられます。
想う相続税理士
形式上の不備等がなければ、家庭裁判所の検認を経て、正式な遺言書として遺産分けに使うことができます。