【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

会社が所有する金銭債権は法人税と相続税で取扱いが変わる

相続税専門税理士の富山です。

今回は、非上場株式の評価をする場合の純資産価額方式における金銭債権の計上額について、お話します。

下記の「元本+利息」とは別のお話です。

想う相続税理士秘書

財産評価基本通達(一部抜粋)
204 貸付金債権の評価
貸付金、売掛金、未収入金、預貯金以外の預け金、仮払金、その他これらに類するもの(以下「貸付金債権等」という。)の価額は、次に掲げる元本の価額と利息の価額との合計額によって評価する。
(1)貸付金債権等の元本の価額は、その返済されるべき金額
(2)貸付金債権等に係る利息の価額は、課税時期現在の既経過利息として支払を受けるべき金額


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法人税における貸倒損失の要件

法人税の申告においては、金銭債権につき、次の場合に貸倒損失として処理が可能となり、それぞれ次の時点でその金銭債権はないものとされます。

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.5320 貸倒損失として処理できる場合

金銭債権が切り捨てられた場合
次に掲げるような事実に基づいて切り捨てられた金額は、その事実が生じた事業年度の損金の額に算入されます。
1 会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社法、民事再生法の規定により切り捨てられた金額
2 法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定および行政機関や金融機関などのあっせんによる協議で、合理的な基準によって切り捨てられた金額
3 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明らかにした債務免除額

金銭債権の全額が回収不能となった場合
債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理することができます。ただし担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ損金経理はできません。
なお、保証債務は現実に履行した後でなければ貸倒れの対象とすることはできません。

一定期間取引停止後弁済がない場合等
次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸付金などは含みません。)について、その売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理をすることができます。
1 継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき
(ただし、その売掛債権について担保物のある場合は除きます。)
なお、不動産取引のように、たまたま取引を行った債務者に対する売掛債権については、この取扱いの適用はありません。
2 同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく、支払を督促しても弁済がない場合

相続財産の中に非上場株式がある場合

亡くなった方が、親族で経営している同族会社の社長だったりして、その同族会社の株主になっていて、その同族会社の株式を所有していた場合、その同族会社の株式(非上場株式)も相続財産として相続税の課税対象になります。

非上場株式の評価方法はいくつかあるのですが、その中に「純資産価額方式」というモノがあり、この方式による場合には、その会社の所有する資産や負債に着目します。

この場合、金銭債権については、会社の帳簿上の金額をそのまま使用せず、回収可能性を考慮して計上します(回収不能部分について減額します)。

相続税(非上場株式の評価)における資産計上不要要件

相続税の申告において、非上場株式の評価をする上で純資産価額方式により計算する場合には、金銭債権につき、その回収が不可能または著しく困難であると見込まれる次のいずれかに該当するときは、その見込まれる金額に相当する債権金額は、その同族会社が所有していないものとして株式を評価します。

財産評価基本通達(一部抜粋加工)
205 貸付金債権等の元本価額の範囲

(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)
イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む。)において取引停止処分を受けたとき
ロ 会社更生法の規定による更生手続開始の決定があったとき
ハ 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があったとき
ニ 会社法の規定による特別清算開始の命令があったとき
ホ 破産法の規定による破産手続開始の決定があったとき
ヘ 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき

(2) 更生計画認可の決定、再生計画認可の決定、特別清算に係る協定の認可の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額
イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額
ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額

(3) 当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額

法人税の申告において貸倒処理できない場合でも、非上場株式の評価において貸倒れ的な処理(資産として計上しない)ができる場合がありますので、ご注意を。

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