相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税申告における社葬費用の取扱いについて、お話します。
個人葬(一般葬)にすべきか社葬にすべきか
会社の代表者等が亡くなった場合、その葬儀を「個人葬」でやるのか、「社葬」でやるのか、悩まれる場合もあるかもしれません。
完全に個人葬、社葬とはできないために、合同葬としてやる場合もあるでしょう。
合同葬でやった場合、その支出した費用のうち、どの費用が個人の負担なのか、どの費用が会社の負担なのかを、明確にしておく必要があります。
個人が負担するものについては、その亡くなった会社の代表者等の相続税申告における債務控除の対象となり、会社が負担するものについては、その会社の経費(損金)となり、それぞれ、相続税・法人税を軽減する効果を生みます(葬儀に係る費用でも、香典返戻費用など、対象とならないものもあります)。
亡くなった方がその会社の株式を所有している場合
その会社が非上場会社(同族会社)で、その亡くなった会社の代表者等がその会社の株式を所有していた場合、その株式も相続税の課税対象となります。
相続税申告のためにその株式を評価する際、会社が負担する社葬費用は加味されるのか?(社葬費用を負担した分だけ評価が下がるのか?)という疑問を持たれる方もいらっしゃるでしょう(疑問を持つのは依頼を受けた税理士だけかもしれませんが)。
非上場株式を評価する場合、「類似業種比準価額」と「純資産価額」というモノを折衷して(会社の規模等に合わせて混ぜっこして)計算するのですが、専門書を読むと、純資産価額の計算において、(死亡退職金などと同じように)社葬費用は負債として計上可と書かれているモノがありましたが、非上場株式の評価の本は、これについて全く触れていないモノばかりなので、過去の判決・裁決の事例を調べてみました。
最高裁判決を読んでみると・・・
出典:TAINS(Z228-7974)
最高裁平成8年(行ツ)第106号相続税更正処分等取消請求上告事件(棄却)(確定)
社葬費用が本来の負債でない以上、後に述べる理由以外に負債計上の理由はあり得ない
社葬費用の負債計上が許されるとすれば、それは原判決も説示し、かつ一般的にも説明されているように、個人が営む葬式費用の負債計上が相続税法により許されることとの均衡に尽き
原判決も認めるように、課税当局者である被控訴人においてさえ、説を変更しなければならないほど、本件の各争点は重大な問題を含んでおり、納税者である上告人らが、申告に先立つて判決と同様の結論を持つことは不可能であつたというべきである。その困難さの故に、上告人は、これまでの相続税法や通達の解釈及び課税実務の運用を出来るだけ尊重しながら、かつ、本件各争点に関して統一的解釈や整合性を保持したうえで本件相続税の申告をしたいと思い、苦慮し、その結果、一見すれば不利益とも思われる社葬費用を負債に計上すべきでないとの結論に達し、敢えてそれに従つて相続税の申告をした程である。
かかる状況は正に国税通則法第65条第4項にいう「正当な理由」に該当するというべきである。
個人葬に係る費用が相続税の申告で債務控除の対象となるように、社葬に係る費用も株式の評価において負債計上できる、という結論になっています。
想う相続税理士